押さえておきたい「お礼状の基本的なマナー」とは?
お歳暮をいただいたら、とにかく受け取ったことを知らせ、お礼を伝えることが大切です。親戚など親しい間でしたら電話でお礼を伝えても構いませんが、仕事関係などはきちんと手紙で感謝の気持ちを伝えましょう。お礼状には、通常の手紙と違い「構成のルール」があります。
書かなければいけない事(決まり文句など)の他に私信を追加することは可能ですが、それでも私信(私用の内容)が中心になるような構成にならないよう注意しましょう。
■お礼状に込めたい3つの気持ちとは
お礼状には「お歳暮をいただいてありがとうございます」という感謝の気持ち、頂いたものを、相手が贈ってよかった、と思えるよう感謝を込めて褒めましょう。自分はもちろん家族も喜んでいると伝えます。そして「末永いお付き合い」のお願いの気持ち。そして相手の健康を気遣う事がポイントです。
気持を込めるという意味で「手書き(自筆)」が良いでしょう。
■お礼状を出すタイミング
お礼状は「極力、品物を受け取ったらすぐに出す」のが鉄則です。諸事情によりすぐに出せない場合は先に電話で一報を入れておきましょう。受け取ったその日に電話をし、翌日にお礼状を出せるような状況が一番です。遅くとも受け取って3日以内にはお礼状を投函できるようにしたいですね。
でも年末の忙しい時期、気がついたら日にちが経ってしまった時は、次のような「遅れた場合のお詫びの文章」を入れましょう。
「本来ならば早急にお礼を申し上げなければならないところ、このように遅くなってしまい本当に申し訳ございません」
■お礼状は「便箋」「はがき」それとも「メール」?
お礼状と一口に言いますが、一般的には便箋(封書)もしくははがきで出します。「状」というのは「様子や次第を書き記した文書」のことなので、便箋でもはがきでも良いのですが、できれば封書で送ることをおすすめします。特に目上の方や仕事関係でしたら封書が良いでしょう。
メールやSNSなどでお礼を伝える方もいらっしゃるでしょうが、これらは文書ではありませんし、簡易連絡用の手段として認識されていますので、お礼状のような「改まった場合」には不向きです。
■縦書きと横書きの使い分けとその書き方
横書きが一般化しつつある現代で、縦書きのほうが、中心と縦横の大きさに注意が必要なのでバランスが取りづらいでしょう。しかしもともと日本は縦書き社会でしたので、今でもそれが正式なものとされています。もし自分が受け取る側だったとして、縦書きと横書きの両方を見比べたら、縦書きのほうが改まってカッチリとした印象を受けませんか?
でも時と場合によっては横書きでも構いませんので、あまり神経質にならずに臨機応変に。お礼状の場合は「余白」にも注意を払う必要があり、行の最初に1文字だけ、という構成にならないように改行の位置を調整する必要もあります。
■妻が夫に代わって正式なお礼状を書く時の作法とは
お礼状は「本人がしたためるもの」なのですが、夫婦の場合は妻が忙しい夫の代わりにお礼状を書くことは珍しくありませんね。ただし、重要なお取引先などは本人が書いた方が良いでしょう。それ以外は身内なのですから妻が夫の代わりに書くことは問題ありません。そんな時注意したいのが「頭語と結語の組み合わせ」です。
手紙のルールには「男言葉・女言葉」というものがあり、頭語と結語の組み合わせにも男言葉・女言葉があるのです。代筆者が奥様でも、差出人が旦那様の場合は「男言葉で書く」のが決まり事となっています。「拝啓」で始め、女言葉の「かしこ」ではなく「敬具」でしめましょう。
また差出人の名前は、夫の名前を書き、縦書きの場合にはその左下に小さめに「内」と書き添えます。ただし、親しい関係の場合は妻の名前で出したり、二人の名前を書いてもいいでしょう。
知っておきたい「お礼状の基本構成」とは?
いざお礼状を書こうと思っても、「どういう構成にしたら良いのか」と頭を悩ませる方も多いでしょう。実際に相手を訪問する時と同じように考えてみませんか?
まず玄関での挨拶、これが「頭語」書き出しの挨拶です。次に部屋に通されてから季節の挨拶や、相手の健康などを尋ねますよね。それが時候の挨拶などの「前文」と呼ばれる部分。そして、訪問の理由を述べるのが手紙では「本文」にあたります。そして帰り際の玄関での挨拶が「結語」、結びの挨拶になります。簡単でしょう?
「頭語・結語」や「時候の挨拶」は決まり文句も多いのでどんなものがあるのかご説明しますね。
■「頭語」と「結語」のルールとその例
「頭語(とうご)」と呼ばれる手紙の始まりに書く決まり文句(話し言葉でいうと、ごめんください、などの「挨拶」に当たるもの)があります。一般的なものは「拝啓」謹んで申し上げる、という意味があります。そして、さようなら、に当たるのが「結語」ですが、「頭語」と「結語」には組み合わせがあるので注意が必要です。
一般的な手紙
「拝啓」に対して「敬具」、女性の場合は「拝啓」または「一筆申し上げます」に対して「かしこ」で終わります。
丁寧な手紙・目上の方への手紙
「謹啓」には「敬白」で終わります。女性の場合は「謹啓」または「謹んで申し上げます」に対して「かしこ」で終わります。
面識のない相手に使えるもの
「拝啓」に対して「拝具」というのもあります。
■季節にあった「時候の挨拶」文例とは
「頭語」の次に着くのが「時候の挨拶」です。季節の挨拶は「冬だから、雪とか寒いとかでいいんじゃない?」と思う方もいらっしゃいますよね。自分らしい表現で季節感を素敵に表現できたらいいですね。と言われても、とおっしゃる方のために例文をご用意しました。
12月に使える時候の挨拶+相手の状況を尋ねる
年の瀬も押し迫って参りましたが、皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
木枯らしの吹きすさぶ季節となりましたが、お元気でお過ごしでしょうか。
寒さも本格的なってまいりました。いかがお過ごしでしょうか。
■「お歳暮に対するお礼」の表現とは
お歳暮のお礼は、「どれだけ喜んでいるか」が伝わるように書きましょう。食品でしたら「家族みんなで大変美味しくいただいております」または「新鮮な海の幸を家族全員で堪能させていただきました」などの一言が大切。
もし口にする暇が無かったら、「ご丁寧なお歳暮の品をお贈りいただきまして誠にありがとうございました」や「お心のこもったお品をいただきありがとうございました」「大変結構なお品を頂き、ありがとうございました」など良いですね。
■「相手先の健康を気遣う気持ち」を伝える言葉とは
相手の健康を気遣う文面で最も多用されるのは「ご自愛ください」かもしれません。自愛とは「自身の体を大切にする」という意味があり、暑さ・寒さ・季節の変わり目など体調を崩しやすい時期にオールマイティーに使える言葉なのです。
ただし、「お体ご自愛ください」は「身体を」の部分の意味が重複してしまいます。「頭痛が痛い」のような意味になってしまうのでNGです。また同じ音である「ご慈愛」はあなたの愛情を私にもくださいという意味になるので、字の間違いには要注意です。
ケース別・お歳暮のお礼状の文章構成と例文!
お歳暮のお礼状の細かなルールがわかったところで、全体の構成をみてみましょう。どれをどの順番で並べるのか、内容の追加・削除はどこで行うのかがわかれば、お礼状は決して難しい内容ではありません。7つのシチュエーションを想定し、具体的な文章の構成と例文をご紹介します。
字の間違いに注意しながら、丁寧に描き上げていきましょう!
■ 1.「知人・親戚など」へのお礼状
文体はですます調で揃えます。知人であってもお手紙は改まって書くのがルールです。
・頭語
・時候の挨拶
・相手方の安否(自分方の近況)
・お歳暮のお礼(いただいた品の感想や反応)
・相手方の健康を願う言葉
・結語
・後付け(日付・宛名・差出人など)
というのが一般的な構成です。
例文
拝啓
年の瀬も差し迫ってまいりました。寒さ厳しき折、皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか。お陰様で私たちは変わりなく過ごしております。
さて、この度はお心のこもったお歳暮をいただき、早速、家族みんなでいただきました。いつもながらのお優しいお心遣い、本当にありがとうございました。
お寒さの折、どうぞ皆様、ご自愛ください。
略儀ながら書中にて御礼申し上げます。
敬具
■2.「お返しの品を贈る時」のお礼状とは
こちらからも品物を贈る場合は、お礼状にその旨を追記して出します。その場合のお礼状の構成は、
・頭語
・時候の挨拶
・相手方の安否
・お歳暮のお礼
・お返しの品を贈った旨の言葉
・相手方の健康を願う言葉
・結語
となります。
例文
拝啓
木枯らし寒きこの頃、皆様お変わりございませんか。私共もどうやら無事に今年も過ごすことができそうです。この度はお心のこもった素晴らしいお品をいただき深謝にたえません。ご答礼と言うほどのものではございませんが、心ばかりの品を贈らせていただきます。ご笑納ください。
寒さ厳しき折、どうぞご自愛くださいまして良いお年をお迎えになりますようお祈りいたしております。
敬具
■3.「仲人をした新婚夫婦」からのお歳暮への礼状
新婚夫婦からお歳暮をいただいた場合は、通常のお礼状よりも少しだけ改まった形にしましょう。人生の先輩から後輩へ送るお礼状ですが、あまり上から目線にならないように気を付けましょう。
・頭語
・時候の挨拶
・お歳暮をいただいたお礼
・[我が家も仲睦まじく過ごしたいと話しているなど、自由な内容]
・相手方の健康を気遣う言葉
・結語
となります。名前は自分方も相手方も夫婦連名で出すのが良いでしょう。
例文
拝啓
今年も残り少なくなり、何かとせわしないこの頃ですが、お二人ともお元気のご様子、大変嬉しく思います。
さて、本日はお心遣いをいただき、こころよりお礼申し上げます。いつもお気にかけてくださり、ありがたく思っております。どうぞ今後はお気遣いなさいませんようお願い申し上げます。
ますます寒さが厳しくなりますが、お二人ともどうぞお身体おいといください。来年もますますお二人にとって良い年になりますようお祈りいたします。
かしこ
■4.「部下や目下の人」に対するお礼状
上司から部下へのお礼状のように、自分より目下の相手へ出すお礼状は「気遣ってくれてありがとう」という内容を少し濃い目にすると良いでしょう。
・頭語
・時候の挨拶
・お歳暮のお礼
・ありがたく受け取る旨の言葉(今後不要だと伝える場合はここにその言葉を追加)
・相手方の健康を願う言葉
・書面にてお礼を申し上げる旨の言葉
・結語
となります。
例文
拝啓
お寒さの折、いかがお過ごしですか。
この度は結構なお品を頂戴いたしまして恐縮でございます。家族みんなで喜んでいただいております。
今年もあとわずか、寒さもますます厳しくなってまいりますので、どうぞ皆様お身体にお気をつけください。
末筆ではございますが奥様によろしくお伝えください。
かしこ
■5.「取引先」に対するお礼状とは
企業と企業の間でのお礼状の場合と、個人と企業の場合のお礼状は若干違いますが、基本的な構成は同じと考えて良いでしょう。
・頭語
・時候の挨拶
・普段お世話になっているお礼
・お歳暮のお礼(毎年配慮いただいていることへのお礼)
・相手方の健康(会社の繁栄)を願う一文(書面にてお礼を申し伝える旨の一文)
となります。
例文
拝啓
師走の候、貴社におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。
さて、この度は結構なお品をお贈りくださいまして誠にありがとうございました。今後ともご期待に添えるよう努力していく所存でございます。引き続きお力添えを賜りますようお願い申し上げます。
寒さ厳しき折、皆様のご健勝と貴社のご発展を心よりお祈りいたします。
略儀ながら書中にてお礼申し上げます。
敬具
■6.「お歳暮の品を受け取れない場合」のお礼状
立場上受け取れない場合のお礼状と、今後の気遣いを遠慮する場合では若干違いますので両方ご紹介します。
立場上受け取れない場合は、
・頭語
・時候の挨拶
・お歳暮のお礼
・お歳暮を受け取れない旨の言葉
・別便にてお歳暮を返送した旨の説明
・書面にてお礼を申し上げる旨の言葉
・結語
となります。
今後の気遣いを遠慮する場合は、
・頭語
・時候の挨拶
・お歳暮のお礼
・今後は気遣い不要である旨の説明
・相手方の健康を願う言葉
・結語、
となります。
例文
拝啓
年の瀬も差し迫ってまいりました。貴社の皆様お変わりございませんでしょうか。この度はお心のこもったお品を頂戴いたしまして誠にありがとうございます。
実は社内の規則がございまして、ご贈答品をいただくことができません。せっかくのお気持ち、誠に申し訳ございませんが、ご厚意のみありがたくいただかせて下さい。失礼の段、心苦しく思いますがどうぞご理解くださいますようお願いいたします。
今後とも変わらぬお付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいたします。
略儀ながら、書面にてお礼、お詫び申し上げます。
敬具
■7.「今後はお歳暮を辞退したい時」に出すお礼状
今後は気遣いいただかなくて良いですよ、という場合、送られてきた品は受け取り、お礼状にて今後はお断りする旨を伝えます。
・頭語
・時候の挨拶
・お歳暮に対するお礼
・今後の気遣いは不要である旨の案内
・相手方の健康を願う言葉
・結語
となります。
例文
拝啓
お寒さの折、いかがお過ごしでしょうか。
さて、この度は結構なお品をいただき大変恐縮いたしております。お気持ちに感謝いたしますが、今後はどうぞこのようなお心遣いをなさいませんようお願いいたします。
皆様のますますのご健勝をお祈り致します。
略儀ながら書面にて、お礼、お願い申し上げます。
敬具
習うより慣れ!何度も書いて練習しよう
決まり言葉が多くあるお礼状ですので、パソコンなどにデフォルトの文面を予め作っておくのがオススメです。時候の挨拶を変えれば、お中元をいただいた時のお礼状になりますよ。また、「美しい言葉だな」と思った言葉をストックしておき、文例をいくつか作っておくのも良いですね。
字のうまさではなく、あなたらしい「心が伝わるお礼状」になることを祈っています!