「お茶とも通ずる、相手に見せない思いやりの贈り物」梅村尚子が選ぶとっておきの手みやげ

「お茶とも通ずる、相手に見せない思いやりの贈り物」梅村尚子が選ぶとっておきの手みやげ

日本人にとって、仕事でもプライベートでも、手みやげは身近な存在。しかし、それだけに贈り手のセンスが問われるものでもあります。連載企画「とっておきの手みやげ帖」では、各界における目利きの著名人に、おすすめの逸品との出会いや誕生秘話、おもてなしのこだわりについてなど、手みやげにまつわるエピソードをご紹介いただきます。ゲストは、梅村尚子さん。400年以上続く三斎流の家元の長女として出雲に生まれ、現在は由緒正しき武家茶道である三斎流の茶道を伝えています。三斎流観翠庵理事、出雲観光大使、島根県遣島使や、和文化コーディネーターとしても活動されている、まさに茶道界の重鎮。今回は、手みやげの極意や役立つ手みやげ情報をたっぷり語っていただきました。


梅村尚子さんに、とっておきの手みやげを聞きました

梅村 尚子(うめむら なおこ)
島根県出雲市生まれ。島根県遣島使、出雲観光大使を務める。400年以上続く三斎流家元の長女として出雲に生まれ、3歳の頃より茶道をならう。京都と東京を拠点としながら、千利休の教えを濃く継承する三斎流の茶道を伝えている。三斎流観翠庵理事、出雲観光大使、島根県遣島使や、和文化コーディネーターとしても活動している。

“お茶”は心配りが全て。贈り物への姿勢にも繋がっています

――手みやげとはこれまでの人生でかなり密に関わってこられたと思いますが、はじめに梅村さんの手みやげ観をお聞きしても宜しいでしょうか。

三斎流の家元に生まれたこともあり、幼い頃から様々な人が家を出入りしていることが日常でした。来客はいつも手みやげを持ってきてくれましたし、反対にお呼ばれした時には必ず手みやげをもっていく。その習慣を側で見て、学んで知っていったので、その頃からと考えると手みやげとはもう長い付き合いです。

子供の頃は、鳩サブレを必ず持って来てくださる方のことは、“鳩サブレのおばあちゃん”と思っていましたし、いつも広島銘菓の氷牡丹という和菓子を持ってこられる方がお見えになると、“氷牡丹が来た”と思っていました(笑)。普段手に入らない特別なご馳走に再びお目にかかれることがすごく嬉しかったんでしょうね。もちろん食べることが大好きだったこともありますが、全国から銘菓が送られてくる環境は、お菓子を覚えるきっかけになりました。

手みやげで大切なことは何よりも、“相手を思いやること”。相手の状況や嗜好をある程度知ることがスタートです。その前提を踏まえて、それぞれの状況に合わせて持っていくものを考えます。例えば、季節を意識するのも相手を思いやることになります。暑い時には涼しげなもの、寒い時にはちょっとほっこりするものが嬉しいですよね。お菓子の名前が季節にあっていると季節が感じられて良いです。

――ものごころついた頃から手みやげと関わってこられたんですね。その手みやげ観は“お茶”にも通ずるところはありますか?

もちろんです。“お茶”は心配りが全てです。人をもてなし、もてなされる文化であって、抹茶をたてるだけが“お茶”じゃないんですよ。人をもてなすときには、相手が気持ち良く過ごしてくれるよう、入念に準備します。水打ちをした後には、お客さんの袖に露がかかって汚れないよう葉っぱを一枚ずつ拭く。

飛び石に跳ねた水も、雑巾で拭って吸っておきます。これ見よがしな準備ではなく、相手からは決して見えない準備ですが、それが“お茶”の全てです。手みやげにも通ずるものがありますよね。相手には見えない努力や相手を思いやる気持ちが大切です。

――今ですと、どのような時に手みやげをお持ちしますか?

お家に招かれたときや、お茶席に呼ばれたら必ず手みやげを持って行きます。あとは、知り合いが公演する歌舞伎、演劇、楽屋見舞いにもお持ちしますね。何か手に持っていないと無いと落ち着かないです。

――そこまで色々なことを考慮されている梅村さんが手みやげで失敗されたことはあるんでしょうか? 

それがあるんです。毎年暑くなってくると、お中元を送りますよね。ある年、京都の「老松」という和菓子屋さんの『夏柑糖』という夏柑の寒天を、相手が不在の時に郵送で贈ってしまってダメにしてしまったことがありました。

本来手みやげは、相手の家に自分が出向いたときに手でお持ちするもの。お中元やお歳暮のような日本特有の季節のご挨拶も、必ず出向いて「暑い季節を乗り切りましょう」とご挨拶しなければならない。いつからか物を贈るだけの文化に変わっていき、より配慮が必要になることを知り、反省しました。

じんわりと広がる、深い旨味。「白」の『霜がわら』

――こちらの手みやげとはどのような形で出会われましたか?

「白(はく)」というお店は、京都の祇園にあるお店です。きっかけは、いつもお世話になっている京都の建仁寺の副住職さんから頂いたこと。「すごいものがあるから」と勧められ、食べてみて驚きました。味はほんのりと甘く、後から控えめな塩気がやってくる。塩気とともに昆布の旨みがじんわりと長く広がります。手が止まらない、クセになる味ですよね。お酒のあてにもなるので喜ばれます。初めてこれを食べてから「白」の虜になりました。

日持ちもして軽く、好みも問わない味。手みやげには最適です。ただ『霜かわら』とう名前なので、雪がかぶった冬に贈るのが良いかもしれません。夏に贈るなら、もう少し冷たいものや涼しげなものを渡すのが良いですね。

京都府 京都市東山区 祇園町南側 570-210

本物の抹茶を使った本格抹茶アイス「茶三代一」の『濃茶』

――ちょうどもう一つの手みやげはアイスをお持ちいただきましたので、こちらは夏の手みやげにぴったりですね。こちらの手みやげとはどのようにして出会われたんですか?

これは私が肝入りで作ってもらったんです。家元でもある義弟がパッケージをデザインと筆書きしています。

抹茶のお菓子が全国的にブームになり、大手の乳製品メーカーが抹茶のアイスを出し始めた頃、この抹茶アイスを作り始めました。私は幼い頃からずっと抹茶を飲んできているので、抹茶の味がわかります。世に出ていた抹茶アイスは乳脂肪分を含んだ後口のすっきりしないものが多かった。そこで、うちに出入りしている「茶三代一」というお茶屋さんに、“後味がさっぱりとした抹茶アイスを作って欲しい”と提案しました。

茶道や抹茶のプロである、弟とひいきのお茶屋さんのこだわりから生まれた抹茶アイスが『濃茶』。完全なる抹茶を味わえる自信作です。後引く味わいは潔く、すっきりしているのにお茶の濃厚さもしっかり残っていて、もたつかない。ジェラートに近いさらりとした舌触りと深いコク。本格的な抹茶を味わえる、贅沢なアイスです。甘いものが苦手な方や、男性でも美味しく楽しんでいただけるスイーツとなっています。

茶三代一

〒693-0021 島根県出雲市塩冶町海上1515-7

――とても美味しそうです。他にもオススメの手みやげはございますか?

熊本の『加勢以多(かせいた)』という和菓子は面白いです。ポルトガルから日本にジャムが入ってきた時代のお菓子。その昔、ポルトガルから入ってきたこの“カイシャ・ダ・マルメラーダ”というお菓子の名前を聞いた日本人が、上手く聞き取れずに『加勢以多(かせいた)』と聞き取ったことから、『加勢以多(かせいた)』と伝わったようです。

“カイシャ・ダ・マルメラーダ”とは日本語でマルメロジャムの箱という意味。今はカリンジャムを使用しているそうですが、その当時からずっと同じ作り方で今まで伝わる歴史あるお菓子だそう。お茶のお菓子としても、お持たせとしても、良いですね。

少しでも熊本のためになればと思い、震災があった時の復興のチャリティーのお茶会の時にはいつもこのお菓子を使っているんですよ。

――様々なお店をご紹介いただきましたが、これらのお店は全てご自分で探されたんですか?

嫁いだ先の姑さんが大層グルメな人で、姑さんから美味しいお店が載っている、“梅村”秘伝の手みやげリストをいただいたんです。“一見さんお断り”をしているお店もリストに載っていたので、試しに伺って「梅村です」と言ってみたら、すんなり売ってくれました。そのリストの甲斐あって、京都中のお店は網羅しています。

あとは自分で見つけたお店もあります。若い頃、京都中を食べ歩いた時期がありました。大学を出て、別の流派で3年間修行した頃。お茶の後継として、お茶だけでなく、お花、着物、他にも様々な技術を身につけなければいけなかった。

私は食べることが大好きだったので、まずはその得意なことから攻めていこうと“おもたせのマスター”を目指しました。その頃に培われたネットワークは今も続いていますし、その頃食べたものとの出会いは今でも鮮明に覚えています。

――最後に、たくさんの手みやげを知る梅村さんにとって、手みやげにおいて最も大切だと思われることを教えてください。

先ほどお茶と手みやげは通ずると言いましたが、“相手を思いやること”は何も難しいことではありません。マナーやルールに縛られるわけでもありませんし、相手が手みやげを受け取って、これからどのような一日を送るのか想像すること、それだけです。

“相手を思いやる”気持ちがあれば誰でも真似できます。ただそれには相手に悟られないような努力が必要です。手間をかけて準備することはもちろん大変ですが、一番大切なことは意外と基本的なこと。思いやりの贈り物が手みやげですね。

企画:大崎安芸路(ロースター)
文・取材:天野成実(ロースター)
撮影:栗原大輔(ロースター)

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