日本の良い物を発信していく場に!
現在、羽田空港には国内線ターミナルだけでも230以上のショップ&レストランが軒を連ねています。デパ地下に負けないほどの魅力的な品揃えを誇り、行列が出来る最先端のスイーツから由緒ある老舗の定番までが一堂に会します。そのワクワク感といったら、国内の空港の中でも文句なしのトップでしょう。
一昔前までの、日持ちがして、個包装でばらまきやすい、そんなお土産ばかりだった時代から、羽田空港はどのように変わってきたのでしょうか。多様化するニーズと、それに対応していくために必要なこととは。羽田空港内における物販を担う会社、羽田エアポートエンタープライズの営業部のお二人に語ってもらいました。
■取材先プロフィール
株式会社羽田エアポートエンタープライズ
東京の空の玄関口である羽田空港のオーナー企業、日本空港ビルデング株式会社のグループ会社として、主に羽田空港(国内線・国際線ターミナル)におけるお土産などの物品販売店、免税店などの店舗の運営を行う会社。成田空港、関西空港でも一部店舗を運営。
■人物プロフィール
営業部 商品課 課長代理:間宮由依さん(写真:右)
2005年入社。売り場での販売を歴て現在の営業部 商品課へ。商品の仕入れやオリジナル商品の企画開発、店舗のMDなどを多岐に渡る業務を担当。常に「羽田空港に足りないものは何か」を考え、普段見たり食べたりしていることから吸収し、アイデアを提案している。
営業部 営業統括課 主任:永谷明優さん(写真:左)
2012年入社。間宮さんと同じく売り場での販売を経験した後、企画商品課(現商品課)を歴て営業統括課へ。羽田空港、成田空港、関西空港で展開する店舗をとりまとめる部署であり、売上管理や同社の広報も兼任している。
「希少性」がお土産業界のキラーワード
――最初に、羽田空港の中でどんな店舗を運営しているのか、具体的に教えていただけますか?
間宮由依さん(以下、間宮):わかりやすいのは、国内線の出発ロビーにあるお店です。東京食賓館やピア、スタースイーツなどの食品を扱う店舗がメインで、国内線ターミナル内だけで現在52店舗を運営しています。店舗名をあまり大きく打ち出していないのでピンとこないかもしれませんが、羽田空港でお土産をお買い上げいただいたことがある方なら、きっとどれかの店舗をご利用されているはずですよ。
――もともとは親会社である日本空港ビルデングが店舗を運営していたそうですが、羽田エアポートエンタープライズはそこから分社化した会社なんですよね?
永谷明優さん(以下、永谷):そうなんです。弊社ではお土産などの物品販売店舗の運営を行っておりますが、他にもグループ会社がいくつもあって、空港内の警備やレストランの運営など、会社ごとに細分化されているんです。
間宮:時代とともに、弊社で扱うお土産も変化してきました。有名ブランドは昔からありましたが、有名ブランドもブラッシュアップしたり、老舗メーカーの新しいブランドも増えています。今までは入数が多く、安くて個包装になっている商品が売れており、今も需要は少なくはないですが、同じ価格でも入数が少なく1個あたりの単価が高いような、質の高い商品の需要が高まっています。
また、今は販売店舗が限られるなど希少性を感じられるものが売上が伸びやすい傾向にあります。日々情報収集をし、ニーズを捉え品揃えに反映させたり、また、ご紹介や各社からのご提案も多く、羽田空港は皆さんからの注目度も高い場所だと感じています。
限定商品は定番土産として定着できるか
――希少性という意味では、羽田空港限定の商品も注目ですよね。特に人気なのはどんな商品ですか?
永谷:やはり空港ならではの商品が人気です。例えば、あるメーカーと共同開発した羽田空港オリジナルブランド「FROZEN to GO」の『カタラーナ』は、冷凍のまま販売している商品。空港で買って家に帰るころには自然に解凍されて食べ頃、というのを想定しています。『羽雲」と『米つぶ煎餅」は、従来の羽田空港の商品ラインナップには少ないカテゴリーだったことから生まれた商品です。
■羽田空港でしか買えない限定土産3選
カタラーナ(右上ベリー・アーモンド/左下パイナップル・ナッツ)
カタラーナをベースに、フルーツをトッピング。羽田空港初のオリジナルブランドを掲げる商品で、今後の展開にも期待大。カタラーナ(各 税込1,728円)
羽雲
売上の大半を洋菓子が占める中、2017年の発売から右肩上がりで売れている。滋賀県の叶匠壽庵とのコラボで生まれた、ふわふわ&もちもち新しいどら焼き。羽雲 5個入(税込1,080円)
米つぶ煎餅
銀座の松崎煎餅とコラボ。塩せんべいと醤油、味噌の3種類のセットで、美味しい塩せんべいを作りたいという思いから生まれた商品。米つぶ煎餅 詰合せ(税込1,296円)
幅広いニーズに応えるため、高価格帯の商品の拡充を!
――近い将来、行っていきたい施策などはありますか?
間宮:お土産に対するニーズはこれからもっと細分化されていくはずです。それに合わせて、足りない部分を強化していくことが必要になってくると思っています。
空港を利用するメインの客層は40代〜60代の方々ですが、特に現状で不足しているのは、この年齢層の方々に気に入っていただけるような高価格帯の商品です。今は3000円くらいまでの商品が主流ですので、5000円〜1万円以上の、フォーマルな手土産にも耐えうる“良いもの”を増やしていきたいですね。
永谷:国際線ターミナルの店舗では、外国人観光客の方をターゲットに日本の工芸品を扱っていたりもするのですが、言語の問題などで、その良さを伝え切れていないというのも課題です。
――2020年には外国人観光客がさらに増えます。そこへ向けた戦略は?
間宮:2020年3月には第2ターミナルが国内線と国際線の併用になるので、客層がガラッと変わることでしょう。しかし、それによってお土産を大きく変えることは今のところ予定していません。オリパラ以降も、空港はあくまでも日本の方達がメインで利用されていくことには変わりありません。今と変わらず、時代時代に合ったものをタイムリーに変えていくことが大切なのではないかと思います。
永谷:お土産を買って配るという文化は日本独特のもので、海外の方にはあまり馴染みがないんです。ですので、インバウンド対策としては、商品の品揃えだけでなく、サービス面も充実させていく必要があるだろうと思っています。言語の対応や、手話のトレーニングなど、色々な方に対応できるようにホスピタリティを強化していくことも大事ですね。
良いと思うものを発信する場に
――最後に、ここだけは変えずに守っていきたい、ということがあれば教えてください。
間宮:店舗に並べる商品を選定する時には、造り手側のこともよく確認するようにしています。例えば売れている商品があるからといって、それをマネして同じように作ったものには魅力が感じられませんよね。
そういったものは避け、逆に製法や原材料など、造り手ならではのこだわりが反映されているものはもっと大切にしていきたいです。また、そのこだわりをお客様に伝えていくことが、お土産というギフトを売る私たちの仕事なのかなと思っています。
永谷:移り変わりの早い業界ですが、昔ながらの形できちんと作られているものって、今も昔も変わらず人気があります。
そこに価値を見いだせるのが日本のよさでもあると思うので、日本人も外国人も関係なく、多くの方にその想いを届けられるようになればいいな、と思います。あと、羽田空港の限定商品は不動の人気になるように売っていきたいですね!
企画:天野成実(ロースター)
取材・文:石井良
撮影:栗原大輔(ロースター)