ギフトの本質はメッセージにある。社会を変える「カジュアルギフト」

ギフトの本質はメッセージにある。社会を変える「カジュアルギフト」

ギフト市場の未来を業界のキーマンに占ってもらう連載企画。今回は、オンラインで贈れるeギフトの先駆けとなった「giftee(ギフティ)」を取り上げ、代表取締役の太田睦さんにお話をうかがいます。LINEやメール、ツイッターなどで気軽に小さなギフトが贈れるサービス・ギフティ。日常の感謝の気持ちを伝えるためにみんながギフトを贈り合ったら、どんな世の中になるのでしょうか。


国内ナンバーワンのカジュアルギフトサービス「giftee」

メールやLINEなどで気軽にギフトを送れるサービス「giftee(ギフティ)」。ギフト一覧から商品を選び、ギフトカードを作成。メッセージと一緒にURLを送れば、そのURLからギフトカードを開けるという仕組みです。

ギフトは「お店で交換」と「お届け」の二種類があり、「お店で交換」の場合は、スマートフォン上に表示されるeギフトを最寄りの店舗で商品に交換することができます。ギフトの内容は、「スターバックス」のドリンクチケット、コンビニで引き換えられる『ハーゲンダッツ』などから、映像配信サービスのプリペイドギフト、レストランやホテルで使えるクーポン券など幅広く取り揃えられています。

「ちょっとしたお祝いの気持ちを伝えるためのギフトサービスが作りたかった」と語る、代表取締役の太田睦さん。ギフティを創業してから9年、会員登録数は100万人を突破しました。スモールギフトの文化を根付かせるために奮闘してきた太田さんに、「giftee」が使われているシーン、海外のeギフトの動向、そしてeギフト市場の展望について伺いました。

取材先プロフィール

giftee(ギフティ):https://giftee.co/

日頃の「小さなありがとう」の気持ちと一緒に、オンライン上で簡単にギフトを贈ることができるカジュアルギフトサービス「giftee」を運営。全国42,000店舗以上の商品を取り扱っている。ギフト商品の平均販売価格は約600円と少額で、カジュアルなシーンでギフトを贈る文化を創出している。

また、個人向けのほかには、法人を対象としたギフト販売システム「eGift System」を提供。また、eギフトを活用した法人向けソリューション「giftee for Business」、地域通貨等を電子化するプラットフォーム「Welcome ! STAMP」、この4つを主力事業として展開している。

人物プロフィール

代表取締役:太田睦さん
1984年生まれ。2007年に慶應義塾大学総合政策学部卒後、アクセンチュア株式会社に入社。SEとして官公庁プロジェクトのシステム開発に従事。2010年、デジタルガレージ主催のアクセラレータープログラムに参加。同年8月に「giftee」を運営する株式会社ギフティを創業。

32円の『ブラックサンダー』もギフトになる

――太田さんがギフティの事業を着想したきっかけとは?

太田睦さん(以下、太田):きっかけは、フェイスブックの「おめでとうメッセージ」です。私がギフティを創業した2010年はフェイスブックが盛んで、毎日のように友人の誕生日、結婚、出産などお祝いごとが報告されていました。私は、一人ひとりに「おめでとう」というメッセージを送っていたのですが、一部の親しい友人に対してはメッセージだけでは物足りないな、と思っていたんです。

気持ちを伝えるために、ちょっとしたギフトを贈りたい。でも、相手の住所もわからないですし、プレゼントを買う時間の余裕もない。そうしたときに行きつけのカフェで、「このコーヒー1杯を、オンラインで贈れたらいいな」と思ったんです。それがきっかけですね。

――「おめでとう」という気持ちに添えて、さっとギフトを贈る。それを実現するために「giftee」が生まれたんですね。

太田:サービスが始まった当初は、店舗で引き換えられるギフトの取扱い先が、大手チェーンだと「ファミリーマート」くらいでした。あとは、渋谷や表参道のカフェを1店ずつ営業して、取扱い先を開拓していました。気軽に贈りあえるサービスにしたかったので、どうしても高額になってしまう配送ギフトより、低価格で贈れる店舗受取り型のギフトを増やしたかったんです。でもはじめはそうもいかず、2000〜3000円の配送ギフトが中心になっていました。

今は「ファミリーマート」以外のコンビニや、「サーティワン アイスクリーム」、「スターバックス」、「Soup Stock Tokyo」、「GODIVA(ゴディバ)」など店舗受取りの取引先が増え、ギフトのバラエティも豊富になりました。

――現在は、どんなギフトがよく贈られているのでしょうか。

太田:「スターバックス」のドリンクチケットは人気ですね。あとは、コンビニのコーヒー、サーティーワンのアイスなどもよく贈られています。こうしたeギフトはカジュアルなシーンで使われる事が多いので、基本的には数百円の低額ギフトが人気なんです。一番低額なのは、コンビニで引き換えられる32円の「ブラックサンダー」。バレンタインの義理チョコとして大量に贈られているようです(笑)。

いかに相手の期待を超えるか。それがうれしさを決める

―― 「ブラックサンダー」もギフトになるんですか! ギフト一覧を見て、替え玉付きでラーメンを贈るチケットなどもあるのに驚きました。「giftee」は、ギフトの概念を拡張していますね。

太田:こういうスモールギフトは、贈るもの自体よりもメッセージのほうがメインだと思うんです。たしかに「ブラックサンダー」は32円です。でも相手は「メッセージだけではなく何かを贈りたい」と思ってくれたわけですよね。そしてギフトカードを選んで、メッセージを入力して、決済して、「giftee」のeギフトを送ってくれた。それがうれしい。だから、なんでも贈り物になるんです。

あと、ギフトのうれしさはいかに受け取る側の期待を超えられるかで決まると思っていて。親しい友人の誕生日にコーヒー1杯は、ちょっとがっかりしますよね。でも、なんでもない日に友達や同僚からコーヒーを贈られたらうれしいでしょう。

――たしかに。何かもらえるとはまったく期待していない状態ですからね。

太田:誰かを祝いたい、ねぎらいたい、感謝を伝えたい……そうした気持ちがぱっと生まれても、何かを贈るすべがなくて「まあいいか」と伝えずに消えてしまうことはたくさんあるはず。そういう気持ちを、形にしてあげるのがギフティのやるべきことだと思っています。

――まさに創業時の太田さん自身の気持ちを体現した事業になっているんですね。商品を限定しているギフトと、買うものは自由である商品券的なギフト、どちらが人気なのでしょうか。

太田:商品が限定されているほうがメッセージを伝えやすい、というのはあるみたいですね。例えば、「お疲れさま」という気持ちを伝えたいなら、コンビニで500円使えるチケットよりも、コーヒーチケットのほうが伝わりやすい。「仕事がんばって」だったらエナジードリンク、「1週間お疲れさま」だったら缶ビールなど、そういうメッセージと組み合わせて商品が選ばれている、というのはあります。

断食明けおめでとう!ギフトは、土地の文化に根付いている

――現状は、どんなシーンで「giftee」のサービスが使われているのでしょうか。

太田:やはりお祝いごとのシーンではよく使われています。誕生日、結婚、出産あたりは定番です。「giftee」では、メッセージカードも一緒に送れるので、そういったお祝いのメッセージと一緒に贈られているギフトが多いことからわかります。あとはバレンタイン、ホワイトデー。おもしろいところだと、「仕送り」なんていう使い方もあるようです。

――「giftee」で仕送り、ですか?

太田:親御さんがひとり暮らしをする子どもに生活費を送りたいんだけど、現金だと全部遊びに使ってしまうこともある。そこで、「すかいらーく」や「大戸屋ごはん処」などの食事券を「giftee」で贈るんだそうです。

―― それだと、食事にしか使えませんもんね(笑)。他にも変わった使い方はありますか?

太田:待ち合わせで遅れそうな時に使う、という技もあります。待ち合わせ場所の近くに、スターバックスなど「giftee」が使える店があったら、そこのドリンクチケットを「ごめん、15分遅れるからスタバ入ってて!」といったメッセージと一緒に贈るんです。

――スマート! オンラインで贈って、その場で交換できるeギフトだからこその使い方ですね。

太田:「giftee」は金曜日に一番使われていて、土日は動きが静かなんです。長い休みに入ると、ぐっと売上が下がります。そこから「giftee」は、友人や同僚といった距離感の人と会うときによく使われるのではないか、と推測しています。人と会うことで、時間をつくってもらう、情報を教えてもらう、なにか持ってきてもらうなど、ちょっとした貸し借りが発生する。その借りを返すために、人はスモールギフトを贈るのではないでしょうか。

――海外でのeギフト事情はどうなんでしょうか。

太田:アメリカや韓国などでは、日本より早くeギフトが普及しました。アメリカでは、株をeギフトとして贈るというサービスもあるんですよ。

――すごいですね! 海外では、ギフトを贈るシーンも日本と違っていそうです。

太田:そうですね。ギフティは昨年からマレーシアに進出したのですが、贈るシーンがまったく違っていておもしろいです。マレーシアは国教がイスラム教なので、1年に一度、1ヶ月の断食をするんですよね。その断食明けのお祝いにちなんだギフトがたくさん贈られていました。ギフトというのは、非常にその土地の文化に根付いた行動なんだ、と感じましたね。

ギフトは、贈られた人の世界を広げていく

――今後、日本のeギフト市場はどうなると予測されていますか?

太田:国内の市場規模は2016年度時点で285億円。2021年度には、1310億円まで伸びる試算が出ています。このようにeギフトの市場自体は年々伸びていて、今後もその傾向は変わらないでしょう。韓国などと同じく、まずは個人向けが伸びて、そのあと法人向け市場が伸びる、という流れをたどっていくと考えています。

――法人向けのeギフトとは?

太田:例えば、アンケートに答えてくれたお客様にクオカードなどを送っていたノベルティが、eギフトに置き換わっていっているんです。この市場は日本でもものすごい勢いで伸びています。
その法人向け市場の伸びに引っ張られて、参加するプレイヤーが増えてきています。ギフティでは、2016年4月からeギフトを活用した法人向けソリューション「giftee for Business」の提供を開始しており、すでに500社以上の企業に導入をいただいています。

―― 法人向けはニーズが大きそうですね。個人向けはどうなのでしょうか。

太田:まだまだではありますが、市場が広がっていることは確かです。「giftee」は、2018年に100万人の会員登録を達成しました。これは、「giftee」でギフトを送れる状態の人が100万人いる、ということです。もちろん、この人達がいつも「giftee」を使っているわけではありません。でも、もし毎月、毎週eギフトを贈る人が100万人になれば、世の中がすごく変わると思っています。

――もっと、みんなが気軽に贈り物をするようになる。

太田:そうなるといいな、と思っています。ギフティのミッションは「ギフトで、『人と人』『人と企業』『人とまち』をつないでいく」です。私達は贈られるギフトの総量が増えていけばいくほど、人々の可能性が広がると信じています。

ギフトをもらうって、新しい体験をすることだと思うんです。行ったことがない店に入る、食べたことがないものを食べる、知らなかったブランドを知る……。行ったことがない店に行く途中で知らない道を通るのも、世界が広がることの一つだと思います。

創業からの思いである、「小さな気持ちを、ギフトにして届けたい」。これが広く実現したら、もっと世界が良くなると信じて、ギフティの事業をやっています。eギフトをブームで終わらせずに、自分の孫の世代も当たり前に使うサービスにしたいですね。

企画:天野成実(ロースター)
取材・文:崎谷実穂
撮影:栗原大輔(ロースター)

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