ネットが可能にする新しいギフト文化
贈り贈られ、たくさんの幸せを生み出すギフトは、おもてなしの心が根付く日本にとって大切な文化。お歳暮や結婚式の引き出物などのフォーマルギフトから、誕生日や手土産といったカジュアルギフトまで形は様々。さらに新たなライフスタイルが生まれ多様化する今、ギフトもまた変化しています。
そこでこの連載では、ギフト業界のキーパーソンに、これからのギフトの未来について聞いていきます。今回訪ねたのは、話題のギフトECサービス「Anny」を運営する株式会社BLT 。Annyは数あるギフトECのなかでも、総合力とお洒落度で人気です。「世界中に“おめでとう”“と“ありがとう”を増やしたい」と語るMDマネージャーの豊田弥生さんに、ギフトECの最新事情を伺いました。
■取材先プロフィール
Anny(アニー) https://anny.gift/
株式会社BLTによるネットギフトサービス。マーケティング事業で知られるトレンダーズ株式会社内のインキュベーションラボ「Between Life n Tech」にて、2015年「Anny magazine」としてスタート。翌年ギフトECサービスを開始し、2018年にはBLT社設立により現体制に。「毎日にアニバーサリーを」をテーマに幅広いギフトを紹介・販売する。
■取材者プロフィール
豊田弥生(とよだ やよい)さん
株式会社BLT MD(マーチャンダイジング)部門マネージャー。2007年にトレンダーズ株式会社に入社後、PRプランニングや新規事業を経験。2018年からBLT社に所属し、AnnyではMD、マーケティングを担当としつつ、ギフトECの多領域にわたる業務を担当する。
合言葉は「毎日にアニバーサリーを」
――「Anny」は「毎日にアニバーサリーを」をテーマに、数あるギフトECサービスのなかでも魅力的な切り口と品揃えとで、贈り物を紹介・販売しています。2019年現在では250万MAU(月間アクティブユーザ数)、取扱アイテムは1600点超、約150ブランドにわたるとのこと。この人気サービス誕生の経緯を教えて頂けますか?
豊田弥生さん(以下、豊田):出発点は、マーケティング事業で知られるトレンダーズ社で、社内のインキュベーションラボ「Between Life n Tech」のメンバーたちが生み出したアイデアでした。このラボは名前の通り、暮らしとテクノロジーをつなぐ新しいサービスを考えようと発足したものです。
そのなかでギフトECに注目したのは市場リサーチやお付き合いのある百貨店さんとの対話なども経ての結果ですが、同時にメンバーたちのリアルな気持ちが根底にあったと思っています。
――そのリアルな気持ちとは?
豊田:ギフトというのは、極端に言ってしまうと、互いに贈り合わなくても生きてはいけるものですよね。でも同時に、ギフトは人と人の絆を深めることができるものだと思っています。誰かへのお祝いや感謝の思い、そして贈り物を何にしようかと考えた時間、さらに相手が受け取ってからのやり取り。そのすベてがそうした関係性を育てるように思います。
また、ギフトでなければ出会えないモノや、そこからの発見もありますよね。マーチャンダイジングの視点から言えば、人とモノとの豊かな接点としても、ギフトは大切な行為だと言えます。
――Annyでは、そうした絆や出会いの生まれるきっかけをECの手法で増やして行こうと考えているわけですね。
豊田:Annyでは、ご自身がギフトを受け取ったことをきっかけにユーザーになってくれる方も多いです。AさんがBさんにギフトを贈ると、そこからギフトバック(お返しのギフト)が生まれ、さらにBさんが今度は別の人にも贈ってあげたくなる。
そうして世界中で「おめでとう」と「ありがとう」の数がふくらんでいけば、暮らしのなかの感動や喜びも増えていくのではとの思いがあります。そんな良いスパイラルを生むことになれば、と常に考えています。
「祝い」や「感謝」の気持ちをつなげていく
――ギフトECの良さである手軽さやスピードは、そうした祝いや感謝の気持ちのスパイラルに貢献できる点がありますか?
豊田:そうですね。従来はちょっとこだわってギフトを選ぼうとすると、良い品揃えのお店を色々見て回ることになりますが、Annyでは同じことをパソコンやスマホから、より気軽にできます。
また、ギフトを選んだらすぐメールやLINEで相手に送れる「ギフトレター」のシステムもネットギフトならではだと思います。誕生日当日や出産報告をもらった直後に贈ることができて、送付先やお届け日時などはご本人に指定してもらうことができます。
――「今すぐ伝えたい」という想いを届けるときも背中を押してくれそうですね。また、「しまった、今日は記念日だった…(汗)」といったピンチにも役立ちそうです。
豊田:実際にデータで見ると、たとえば昨年はクリスマス前日から当日にかけて、ギフトレターの利用ユーザー数がものすごくアップしました。一方で、こうしたネットギフトの浸透が、日常的により気軽にギフトを贈り合う文化にもつながればと願っています。
――Annyがテーマとして掲げる「毎日にアニバーサリーを」も、そこにつながっているのですね。
豊田:はい。ギフトは暮らしの中で心を豊かにする行為だと思うのです。ギフトを通じて贈る側/贈られる側のどちらも豊かな気持ちになれる。忙しい毎日でも小さなギフトで温かな気持ちになれますし、もちろん、結婚、出産など大きなお祝いごとには、それにぴったりのギフトがあっていい。そんなふうに考えています。
――Annyのサイト構成は、まさに今の言葉通りのつくりになっています。ギフト探しの入口は、シーン(誕生日、結婚祝い、出産祝い、父の日、母の日、サプライズ等)、ジャンル(ファッション、インテリア、ビューティー等)、贈る相手(性別、年代、関係)、さらに価格帯など多様です。それらがギフト情報のウェブマガジンと融合したものになっていますね。
豊田:編集チームとエンジニアチームが協力しながら、常に改良や新しいアイデアを考えています。編集者はユーザーのコンシェルジュ的存在で、常に魅力的なギフトを発掘しては紹介しています。エンジニアたちは、いかに使いやすく、かつ喜んでいただけるシステムを提供できるかを考え続けています。
ギフトECから始まる、贈り物文化の多様性
――そんなAnnyにおいて、特にユーザーに人気のギフトなどはありますか?
豊田:主な傾向の中から2つ挙げると、まず「見た目がわかりやすく素敵なもの、可愛い贈り物」。たとえば、花束のように見せたタオルハンカチフラワー(MAXMATERIA)は、世代を超えて常に人気のギフトです。もうひとつの傾向として、贈られる方がご自分では購入しなさそうな「ご褒美的な贈り物」があります。
例として「個室スパ&エステチケットPLUS」(SOW EXPERIENCE)のような体験型があり、こちらは高級ホテルのエステやマッサージ体験、スパ専門店のギフトチケットになります。
FLOWER/MAXMATERIA
3本セット|タオルハンカチ
¥3,888 (税込)
SOW EXPERIENCE
個室スパ&エステチケットPLUS
¥24,300 (税込)
――扱うアイテムを選ぶ上で大切にしていることは?
豊田:Annyは選りすぐりのおしゃれなギフトを揃えたセレクトショップのような存在をイメージしています。ブランドや商品自身にストーリー性があって、私自身人に広めたい、世の中に広めたいと思うものをセレクトしています。
ギフト EC市場ではより安価なソーシャルギフトなども広がりを見せていますが、私たちとしては一定以上のクオリティと価値を持つアイテムを扱いたいと思っています。
――もともとマーケティング企業から生まれたサービスということからいえば、やはり「売れ筋」も敏感にとらえて対応しているのでしょうか。
豊田:ギフト市場も従来のようなターゲット属性でカテゴライズできる時代ではありません。「20 代女性ならアロマ好き」のような画一的な思考から、「キャンプ好き」「猫好き」「カレー好き」など、細分化された趣味や志向にひも付くクラスターを意識していく必要を感じています。
特にギフトというのは贈る相手ごとに、その人のことをあれこれ思いながら選ぶものですよね。たとえば私は最近、ギフトを贈る相手のInstagramを眺めるなどして、「こういうものが好きかな」などと想像しながら選んでいます。
――ギフトをめぐる文化も、市場も、変化し続けるということでしょうね。
豊田:おそらく、ギフトという慣習はこれからも長く続いていくのだと思っています。多忙な現代人の暮らしの中では時間や距離の制約を受けることもありますが、インターネットや新しいテクノロジーはその制約を乗り越えて豊かなギフト文化をつくり出していく可能性も持っていると思うのです。
さらにECならではのギフトサービスも、まだまだ開拓の余地があると考えています。一例として、最近Annyでは法人様向けや、一定数以上のおまとめ注文についてのご相談、引き出物への対応も増えています。
※(株)三越伊勢丹ビジネス・サポートとの提携による
――たとえばAmazonがレコメンド機能を生み出したこと、Facebookが友だちの誕生日を知らせてくれるようになったことは、私たちのコミュニケーションを少なからず変えたと思います。ギフトECを通じてもそうしたことは起こり得るかもしれませんね。
豊田:カタログギフトも最初に登場したときは「誰が使うの?」という声も多かったと聞きます。それが今では当たり前の選択肢として活用されている。何が「当たり前」なのかは時代と共に変わるものですよね。少し視点を変え、言い方を変えるだけで新しい需要をつくることもできるハズです。そうしたギフト文化の多様化も、今後いろいろ起こり得るのではないでしょうか。
――AnnyをはじめとするギフトEC業界の試みが、ギフトの新しい「贈り方」も提案していくような流れに期待しています。
豊田:ありがとうございます。そうした変化の中でも変わらずにいたいのは、繰り返しになりますが、ギフトを通じて世界に「おめでとう」と「ありがとう」がふくらんでいく、そんなサービスを目指す気持ちかなと思っています。
Anny|母の日限定特集
「毎日にアニバーサリーを」をテーマに、アニバーサリーシーンにおすすめなプレゼント・ギフト情報を発信しているAnnyさんから、母の日限定ギフトの特集を実施中。ユニークでおしゃれな母の日ギフトが満載です。ぜひプレゼント選びの参考に、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
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企画:天野成実(ロースター)
取材・文:内田伸一
撮影:栗原大輔(ロースター)