大切なあの人には末広がりの八角箸を。幸せを呼ぶ“ハシ”渡し

職人の手仕事が生み出す匠のギフト。今回は、江戸時代から続く老舗漆工芸「漆芸中島」さんの『江戸八角箸』です。八角箸とは名前の通り、八角形の箸のこと。箸のプレゼントは“人と人とのご縁をつなぐ、幸せのハシ(橋)渡し”とも言われる縁起の良い贈り物。大切なあの人に、とっておきの八角箸を贈ってみては?


創業300年余の老舗名店。いつの時代にも愛される江戸八角箸

江戸時代から続く老舗漆工芸店「漆芸中島」。ここでは、ギフトにぜひオススメしたい『江戸八角箸』が人気です。箸のプレゼントは “人と人とのご縁をつなぐ、幸せのハシ(橋)渡し”とも言われる、縁起の良い贈り物。

さらに、八角は多角形のなかでも丸に近いことから手にしっくりと馴染み、持ちやすいそう。そんな江戸八角箸を売る「漆芸中島」では、1膳1万円の箸が人気です。

一体どんな魅力が秘められているのでしょうか? その謎に迫るべく「漆芸中島」のある東京都中央区にある佃へ足を運びました。

取材先プロフィール

漆芸中島https://www.urusigei-nakajima.com
将軍徳川吉宗の時代からある、創業は300年ほどの老舗漆芸店。江戸時代から続いているからこそ、先代が残した今では手に入りづらい品質の良い材料が代々残っている。上質な材木と、熟練の技術によって作り出される江戸八角箸は、その品質の高さからTVや雑誌などでも多く取り上げられる。

人物プロフィール

中島 泰英さん
昭和18年生まれ。「漆芸中島」第11代目伝統工芸士・一級漆器製造技能士。中学卒業とともに、築地にある「山形屋」で漆芸を学ぶ。18歳で家業の「漆芸中島」に戻り、以降漆塗りの椀や江戸八角箸、漆塗り家具などの製造に従事する。希少な古木を使用する八角箸の製造で知られる。

つまみやすく、滑らない。しっくりと手になじむ一生物の箸

※上から『本黒檀』11,000円、『青黒檀』19,800円、『紫檀』5,500円(全て税込)

――「漆芸中島」さんの江戸八角箸は、こんにゃくも滑らずにつまめるとお聞きしました。ほかにも江戸八角箸の魅力があればお聞かせいただけますか?

中島泰英さん(以下、中島):魅力のひとつは、今ではなかなか手に入らない銘木を使った箸ということ。

特に『黒檀(コクタン)』、『紫檀(シタン)』、『鉄刀木(タガヤサン)』は、重硬で密度の高い材質。その緻密な材質で、家具、仏壇仏具、建材、工芸品などに広く使われているような材木。銘木として代表的なもので、正倉院の宝物にも見られるほど古来より親しまれていたそうですよ。半永久的な耐朽性を持ち、強く硬く重い木材です。

でも、25年前に締結されたワシントン条約によって『黒檀』や『紫檀』なんかの木々の輸入が禁止されてしまってね。さらには生育が極めて遅く、成木になるまでの年月が長い。乱伐が問題になり、現在では世界的にも希少な材木ですね。

それに箸製造に使えるのは30年以上乾燥させた木材のみ。ですから今は父や祖父、先代が仕入れた希少な古木の残りを使っています。

※紫檀、黒檀、鉄刀木(タガヤサン)、ビリアンローズなど、今では入手困難な希少な木材で作られている

――なるほど。ほかではあまりお見かけ出来ない上質な材木を使っていると何が違うんでしょうか?

中島:使ってみるとわかる。うちの八角箸は、『紫檀』や『黒檀』を使っているから、堅くて密度が高く箸の先まで八角形。こんにゃくをつまんでも滑らないよ。

※丸くツルツルとした銀杏も全く滑らずに持ち上げられた

――本当だ! しっくりと手になじんで持ちやすい。見た目は重厚感のある箸なのに、全然重く感じないのも不思議です。長さもちょうど良い。この箸で食事をしたら満足感を得られそうです。

中島:『紫檀』や『黒檀』は、銘木なので割れて痛んでも、手入れをすれば一生使えるので、“一生使える箸”を求めて買いに来る方も多いですね。もう残り僅かになってしまった材木もあって、数十膳ほどしか作れないものもあるけど、出来るだけ多くの方に使ってもらえたら嬉しいですよね。

欲しいと思った今が買い時。
「漆芸中島」の江戸八角箸が手に入るのは今だけ

――中島さんはいつ頃から職人業をされているんですか?

中島:中学を卒業してからだから、かなり昔からだね。その頃は今と違って、中学校を卒業したら働くのは一般的だったんだよ。技術を学ぶために弟子入りした親方の下で2年ほど修行を積み、その後父の店を手伝うようになった。

30歳くらいからは、百貨店で開催されていた“職人展”など様々なイベントに参加しました。それくらいの時期から徐々にうちの存在が広まって、TVや雑誌など数々のメディアに取り上げられるようになりましたね。

――そうなんですね。「漆芸中島」さんへ足を運ぶ方はやはりTVや雑誌などのメディアを見て来る方が多いのですか?

中島:そうだと思いますよ。なかには “良い箸がある”という口コミを聞いて買いに来てくれる方もいます。有難いですね。

“普段は100円ほどの安い箸を使っているけど、この歳で100円の箸で食事をしていたら虚しく感じてしまって”と70歳くらいの方が買いにいらっしゃったこともありましたね。20歳くらいの若い子が買いに来ることもあります。それはもう家族代々使ってくれている方も。様々な方がいらっしゃいますね。

最近だと、ホームページからネット通販で購入する人が増えました。現在売り上げの8割はネット通販。北海道から沖縄まで全国各地から注文がきます。

――全国各地から! すごいですね。

中島:昔は全国各地の百貨店を足で回って移動販売をしていたものだけど、時代は移り変わりますね。今は箸がないと生きていけない時代じゃないし、贈り物をするにしてもとにかくたくさん選択肢があるだろうから。だから、“何を贈ろうか”と探し回った結果うちにたどり着くような人はいるだろうね。

――そうなんですね。江戸八角箸の制作工程をお聞きすることは出来ますか?

中島:まずは、黒檀や紫檀を削って、四角い形状の棒を作ります。これを台にはめて固定して、角をカンナで八角に削っていく。次に、ヤスリで箸の先にあたる部分を削る。その後、さっきのものとは別にある専用のヤスリでさらに磨きあげて、最後に布で拭いて仕上げます。

そしたら、塗料を塗る作業。塗料は、ドイツ製で植物油などをベースに作られた自然塗料を使っているよ。塗った後、1日程度乾かしたら、完成。

今は弟と一緒に作業をしているけど、大体1日10本出来るか出来ないか、くらいかな。現在企業さんから700本『本黒檀』のオーダーが入っているけど、それも半年ほど期間を設けて製作しています。

――中島さんは11代目とのことですが、今後お弟子さんを雇うご予定はございますか?

中島:志願者はいるんだけど、弟子は雇わないことにしているんだよ。木がもう手に入らないから、続けられない。現状、残り僅かになってしまった材木もありますね。そろそろ作ることが出来なくなる箸も出てくる。

欲しいと思ったら、そのときが買い時ですね。東京都中央区佃にお越しの際は、ぜひ逸品をお買い求めにいらしてくださいね。

企画:ロースター
取材・⽂:天野成実(ロースター)
撮影:norico

関連するキーワード


職人の技が光る 匠のギフト

関連する投稿


これぞ職人魂。ライオンハートのあるライフスタイルを届けるために

これぞ職人魂。ライオンハートのあるライフスタイルを届けるために

職人さんにオススメのギフトを伺う本連載。今回はちょっと視点を変えて、プロ根性が垣間見える至極のギフトに注目しました。本日お話を聞いたのは、メンズアクセサリー業界を牽引するブランド、「ライオンハート」の藤原勇気さん。時代を超えて永く愛されるブランドに、アクセサリーPRの極意について伺いました。


レザータウン草加が手掛ける一生モノ「HIKER」のレザーインテリア

レザータウン草加が手掛ける一生モノ「HIKER」のレザーインテリア

職人の手仕事が生み出す、日本が誇るべき匠のギフトを紹介していく本連載。今回着目したのは、インドアでもアウトドアでも使えるレザーのインテリアです。レザータウンを標榜するほど実は皮革産業が盛んな埼玉県草加市。この街の職人たちが協業して作り上げるブランド「HIKER」は、長い時間を共に過ごす大切な人へのギフトなどに最適です。


ユニークなデザイン、匠の技、この道40年の職人が紡ぐ「giraffe」のネクタイ

ユニークなデザイン、匠の技、この道40年の職人が紡ぐ「giraffe」のネクタイ

日本が誇るべき職人が、手作業で一つ一つ時間をかけて作る匠のギフト。今回訪れたのは、東京都渋谷区にあるネクタイ専門店「giraffe(ジラフ)」。環境対策を目的とした“クールビズ”などが定着しつつある日本では、ネクタイを締めたサラリーマンを見る機会も減っている気がします。しかし、そんな時代においても、ユニークなデザインと丁寧な匠の技で、思わずワードローブに加えたくなるような至極の逸品があるのをご存知でしょうか?男性へ贈る定番ギフトであるネクタイ。丹念に作られ、職人技が光るネクタイの魅力に迫りました。


国宝級の逸品。強く美しい江戸切子を贈る

国宝級の逸品。強く美しい江戸切子を贈る

日本が誇るべき職人の手仕事が生み出す匠のギフト。今回は、江戸の伝統工芸として有名な江戸切子です。江戸時代後期、海外から長崎に持ち込まれたカットグラスが江戸へと渡り、「江戸切子」として開花したのがその起源。代表的な矢来・菊・麻などの紋様には、それぞれ意味が込められているため、贈りたい相手にメッセージが込められる粋なギフトとなりそうです。


匠の技を伝えるために生まれた「HARIO Lamp work Factory」のガラスアクセサリー

匠の技を伝えるために生まれた「HARIO Lamp work Factory」のガラスアクセサリー

職人の手仕事が生み出す匠のギフトを紹介していく本連載。今回は、「HARIO Lamp work Factory(ハリオ ランプワーク ファクトリー)」をインタビューしました。ここは「HARIO(ハリオ)」という老舗ガラスメーカーが手がけた、ガラスアクセサリー専門店です。太陽の光に反射してきらきらと輝くガラスアクセサリー。特別な日を彩るギフトとなりそうです。


最新の投稿


疲れてる彼氏にプレゼントしたい癒しグッズ・お役立ちアイテム21選

疲れてる彼氏にプレゼントしたい癒しグッズ・お役立ちアイテム21選

疲れてる彼氏をプレゼントで元気づけたい。そんな優しい彼女さんにおすすめのギフト商品をご紹介します。社会人の彼氏の仕事疲れ、学生の彼氏の勉強・部活疲れなど、日頃たまった疲労を癒すリラックスグッズや実用品を幅広くピックアップしました。記念日やバレンタインなどのギフトに選べば、彼女の思いやりを感じてもらえるはず。本記事を参考に、頑張っている彼氏や忙しい彼氏を労うプレゼントをぜひ見つけてみてくださいね!


リサとガスパールのキュートなお菓子! シュガーバターの木 「リサとガスパール」×「シュガーバターの木」

リサとガスパールのキュートなお菓子! シュガーバターの木 「リサとガスパール」×「シュガーバターの木」

こんにちは。皆さんに旬のギフト情報をいち早くお伝えするギフト総研です。今回は、シュガーバターの木 「リサとガスパール」×「シュガーバターの木」をご紹介します!


母の日に家電をプレゼント!喜ばれる2024年最新モデル27選

母の日に家電をプレゼント!喜ばれる2024年最新モデル27選

母の日のプレゼントに家電はいかがですか?2024年の母の日ギフトには、大切なお母さんの毎日をサポートする家電がおすすめです。本記事では、お母さんがもらって嬉しい家電を価格帯別にご紹介。3,000円以内のお値打ち商品から、10,000円以上の豪華な商品まで幅広くピックアップします。プレゼントに人気のキッチン家電、美容家電のほか、近年注目のスマート家電など、お母さんに喜ばれる実用的なギフトがもりだくさん!ぜひ参考にしてみてくださいね。


母・妻の誕生日に化粧水をプレゼント!年代別のおすすめコスメ厳選10選

母・妻の誕生日に化粧水をプレゼント!年代別のおすすめコスメ厳選10選

母や妻の誕生日には心から喜んでもらえるプレゼントを贈りたいですね。日頃、気にしながらも、ついついゆっくり話をする暇もなく、いったい何が欲しいのかわからない。何を贈ったら良いのか悩んでしまう。そんな時には、女性なら毎日欠かせないコスメをプレゼントしてみませんか。中でも基礎化粧品の化粧水はおすすめです。口紅を贈ると色がなんとなく合わなくて使ってもらえない、なんてことも。そこで化粧水、それも新しくて人気の、そして自分ではちょっと買わないようなお値段のものはねらい目。女性のお肌の悩みは年齢によってさまざまなので、年代別に、それぞれおすすめの化粧水を厳選してご紹介します。お母さんには、いつまでもきれいでキラキラと輝いていてもらいましょう!


出産祝いは消耗品がトレンド!ママも赤ちゃんも喜ぶとっておき消えものギフト12選

出産祝いは消耗品がトレンド!ママも赤ちゃんも喜ぶとっておき消えものギフト12選

いま出産祝いのトレンドは消耗品だそうですよ。もちろん長く使えるアイテムも根強い人気ですが、現代のライフスタイルやニーズに合った育児便利グッズは日々進化。長く使う、というよりもタイパ重視で、本当に使えるものだけを選ぶ傾向があるようです。また消え物なら「好みに左右されにくい」「二人目や三人目にも柔軟に対応可能」など、意外といいことだらけ。そんなトレンドを踏まえ、本記事では出産祝いにおすすめの消耗品ギフトをご紹介します。赤ちゃんとの暮らしを応援するベビー用品や日用品、赤ちゃんへのプレゼント。そして忙しいママへの癒しグッズや美味しいグルメなど、もらって嬉しい消耗品をピックアップしました。選び方のコツや相場も併せてチェックしてみてくださいね。