多様なシーンに寄り添う「giraffe」のネクタイ
ビジネスウェアの軽装化が推奨される動きはありながら、現代でもTPOに応じた着こなしは大切です。また、新成人や新たなスタートを切る人、冠婚葬祭など、ビジネスシーン以外の様々なシーンでも用いられるネクタイは、その人の印象を左右する要素の一つでもあります。
今回は、定番のスーツスタイルに加え、普段使いやパーティーシーンにも着用できる、他にはない珍しい柄や織りのデザインも揃うネクタイ専門店「giraffe(ジラフ)」に注目。恋人や家族、友人など、大切な人が大事な節目を迎える際のギフトとしてもぴったりなこだわりのネクタイについて、詳しく伺っていきましょう。
■取材先プロフィール
ネクタイ専門店giraffe(ジラフ):http://giraffe-tie.com
株式会社スマイルズが運営しているネクタイを専門とするブランド。カラフルな色・柄使いで、素材もシルエットも様々なネクタイは、34℃、36℃、38℃、40℃と4段階の体温別に分けられたラインナップで展開している。
■人物プロフィール
ジラフ事業部 縫製マイスター
井口晶子(いぐちあきこ)さん
約40年、giraffeでネクタイの縫製業務に携わるネクタイ職人。
ジラフ事業部 営業サポート室 副室長
渡邊幸雪(わたなべこうせつ)さん
さりげない個性を添えるビジネス用デザイン
※胸元に切り替えが現れるバイカラーデザイン。「スラント小紋ペイズリークレリックタイ」GRAY×NAVY 14,300円(税込)
※カジュアルなシーンにも合わせやすい人気のリバーシブル。「トップドットレジメン」NAVY 14,300円(税込)
――素材や色も様々で、シンプルなものからユーモアの効いた少し変わり種のデザインまで、豊富な品揃えですよね。
渡邊幸雪さん(以下、渡邊):ありがとうございます。giraffeでは、34℃、36℃、38℃、40℃と4段階の体温に分けたラインナップで展開することをコンセプトとしています。
34℃は、冠婚葬祭で用いやすいようなモノトーンが多く、都会的でクールなアイテムが揃います。36℃は、人間でいう平熱なので通常のビジネスシーンで使いやすいデザイン。
38℃は、ビジネスシーンでも、プレゼンなど少しテンションを上げたいときに使っていただきたいリバーシブルなどがあります。40℃は見るだけで楽しめるような華やかなデザインで、パーティシーンなどにおすすめです。
――面白いコンセプトですね。なかでも人気のネクタイはどちらでしょうか。
渡邊:やはりビジネスシーンで使いやすい36℃のシンプルな色合いのものと、少し変化をつけられる38℃のリバーシブルデザインが人気ですね。通常は表面に光沢がある素材を用いられやすいネクタイですが、giraffeのネクタイではマットな生地感が締めやすくて好評です。
リバーシブルのものだとデザイン自体は派手に見えるかもしれませんが、同系色であればトーンが落ち着いていますし、結んだ時に切り替えが胸元に入るのでフォーマルなシーンでも少しアクセントをつけることができます。
――カジュアルなスタイルにもマッチして着用の幅も広がりそうですね。どのようなお客様が多いのでしょうか。
渡邊:もちろんご自身用に購入される方も多いですが、半数のお客様がギフトとしてご利用くださっています。例えば、ご家族からお父様への誕生日プレゼントだったり、同僚への昇級祝いだったり、恋人へのクリスマスプレゼントだったり……。
価格帯は¥10,000〜¥15,000くらいと、決して安価な値段ではありませんが、1本1本職人さんが時間をかけて作っていますし、他にはなかなかないデザインなのでお客様には納得してお買い求め頂けていると思います。公式ECサイトからも購入可能で、専用のBOXやギフト用の包装も用意しております。
※様々な雪山を登る登山家をイメージしたタイピンと、ネクタイのセット。アイスクライマーシリーズ 各¥27,500セット価格(税込)
「織り」で生み出す唯一無二の絵柄
――ユニークなデザインはどうやって考えられているのでしょうか。
渡邊:デザインは基本的に女性デザイナーが担当しています。女性目線の観点が取り入れられ、“ネクタイ=かっちりとしたビジネスウェア”の概念に囚われないようなデザインも生まれていると感じています。
最近では女性のお客様も増えていて、アイスクライマーシリーズのような、登山家をイメージしたタイピンと山岳をイメージしたネクタイがセットになった商品もギフトに人気です。
――プリントではなく織りで作られた生地を使用されているのですね。
渡邊:そうなんです。ネクタイに使われる生地のほとんど京都の工場で織られたものを使用していて、雪山のネクタイもそのひとつです。ここまで複雑な絵柄を織りで表現するのは簡単なことではないため、工場の職人さんとは何度もやり取りをしながらサンプルを作り上げています。
私たちのデザインに対するこだわりに対して、素晴らしい技術で応えてくださる職人さんたちがいるからこそ、このユニークで唯一無二のネクタイが生まれています。
※約40年間、ネクタイを作り続ける職人の井口さん
――次に、giraffeのネクタイ職人である井口さんにお話を伺います。まずこの世界に入られたきっかけを教えていただけますでしょうか。
井口晶子さん(以下、井口):最初はネクタイの裏つけの内職をしたのがきっかけです。そこで働いていた今の主人と結婚してそのままネクタイ作りが仕事になり、気づけば40年ほどになります。元々ミシンを踏むことも、生地を触ることも好きなものですから、途中で嫌になることはありませんでした。
――giraffeの職人さんは、井口さんお一人だと伺いました。ほかのスタッフさんとの作業はどのように分担されているのでしょうか。
井口:基本的に、生地の裁断からミシンで縫って完成させるところまで私一人で作業をしています。パッチワークデザインのネクタイは縫製スタッフにテキスタイルの部分をお願いしています。縫製スタッフは、余った生地でペンケースやポーチなどの生地小物も作っています。ネームタグと、かんぬきは現在アシスタントに任せています。
――それでもほぼ全工程をお一人で作られていますよね。1日にどのくらいのネクタイが出来上がるのでしょうか。
井口:一日あたり10本くらいでしょうか。生地は最初にまとめてハサミで裁断をし、その後の工程も何本かでまとめて行います。ミシンで縫って、アイロンをかけ、ネクタイの形づくりに重要な芯を入れて縫って、最後にまたアイロンをかけます。1時間に1本のペースです。
1㎜単位の精巧さがネクタイの格好を決める
※ミシンでネクタイの芯付けを行う井口さん
――最も難しい作業工程はどちらでしょうか。
井口:やはり、ネクタイの形を決める芯つけです。ネクタイは一本の芯を生地で包んで縫うのですが、芯がぴったりと入っていないとネクタイにシワが出たりするんです。1㎜ズレていても全く違った雰囲気になってしまうので、きれいな形でも完璧だと言い切れるものを作るのは容易ではないと日々感じています。
――まさに熟練の技を試される作業ですね。一人前になるにはどのくらいかかるのでしょうか。
井口:そうですね、形になるには3年以上はかかるかと思います。私も最初は主人に教わりましたが、一から丁寧に教えてくれることなんてなかったので見様見真似でやっていました。感覚的なところもあるので自分でコツを掴んでいくしかないですね。一から完成まで作れる職人は日本にもそう多くはいらっしゃらないかと思います。
――オーダーメイドも可能なのでしょうか?
井口:はい。たくさんの生地の中からお好みのものを選んでいただき、太さも調整できます。それだけでなくリペア(お直し)も行っています。
もちろんgiraffe以外のブランドも可能です。布が擦り切れてしまったり、誤って洗濯をして縮んでしまったネクタイも出来る限りのことはさせていただいております。くしゃくしゃに傷んでしまったネクタイをアイロンで伸ばしてお直ししたときは、感激されるお客様もいらっしゃいました。
また、定期的にワークショップも開催しているので、ネクタイ作りや生地を使ったテディベアを作る体験もできます。縫製経験ゼロのお客様もいらっしゃるので、本当に誰でも気軽に参加していただけると思います。そういった機会から、少しでも手製のネクタイに興味を持っていただけたら嬉しいですね。
企画:ロースター
取材・⽂:佐藤有紗
撮影:藤井由依(ロースター)