マナー界のカリスマに学ぶ!お歳暮・お中元の基本

ギフト選びに不慣れな女性が贈り物のマナーを学んだり、センスを磨いたりする連載「ギフトスペシャリストへの道」。第三回目は、人気マナー講師「西出ひろ子先生(以下:先生)」に、お歳暮やお中元を贈るときのマナーについて教えていただきました!今回も、木野山ゆう(以下:木野山)さんと一緒にギフトについて学んでいきましょう。


マナーコンサルタント:西出ひろ子先生

実体験に基づくわかりやすい内容のマナー研修や講演を行う西出氏。
メディアへの出演も多く、国内外で90冊以上もの書籍の執筆と監修を行っている人気のマナー講師。ビジネスマナーはもちろんのこと、日常生活や旅行先でのマナー、テーブルマナーなど、さまざまな分野のマナーに精通している。

主人公:木野山ゆう

モデル活動をメインに行う木野山ゆうさん。
本連載の主人公であり、ギフトについてみなさんと一緒に学んでいく存在。レポーターとして、疑問や知りたいことをギフトのスペシャリストたちに聞いていくという役割も。

そもそもお中元やお歳暮とは何か?NGな品物は?

先生:「お歳暮やお中元は、日頃お世話になっている方にお礼の気持ちを伝えるために、品物を贈るというもの。正直な所、NGな品物はありません

前提として、相手の方が喜んでくれる贈り物であればいいんです。

例えば、一般的には目上の方に『“踏みつける”という意味を持つ靴下は、贈ってはいけない』とされていますが、相手の方が『実用的なもので靴下などが欲しい・嬉しい』というのであれば、それをプレゼントしても問題ないですよね。」

お歳暮・お中元のマナーとは

先生:「ゆうさんは、『マナー』って何だと思いますか?」

木野山:「んー…間違えちゃいけない“もの”でしょうか?」

先生:「でしょう?自分が恥をかいちゃいけないという気持ちから、マナーを知っておかなきゃとか、覚えておかなければいけないと思っていませんか?」

木野山:「はい!思います!」

先生:「でもね、それが間違いなんです。マナーというものは、相手の立場に立つということ。だから、自分が恥をかきたくないとか、失敗しちゃいけないと思うものではないんです

贈り物って、相手に喜んでほしいから気持ちを込めてプレゼントしますよね?」

木野山:「はい!贈り物を渡す相手が喜んでくれたらいいな、あの人こういうの好きだったなぁとか思いながらギフトを選んでプレゼントします。」

先生:「けれど、お歳暮やお中元といわれると、『暮や夏に送らなきゃいけない…!』など、決まりごと(ルール)の方を気にしてしまいがちではないですか?」

木野山:「確かにそうですね!それも(贈るべきときに贈るのが)マナーだと思うんですけど、違うんですか?」

先生:「うん!そんなふうに型にはめたり、決まりごとのようになってしまうのが贈り物のマナーとしてNGなんですよ。

だから、今日はまず“そこ”を取りのぞいちゃってください。

純粋に、お歳暮とお中元は日頃お世話になっている方に伝える“感謝の気持ち”だと、意識しましょう。」

先生:「『お中元』は中国から来た言葉。中国では一年の始まりを『元』といい、一年の半ばである時期を指すのが『中元』、年末を表す暮という言葉が入るのが『歳暮』。

このように年2回の節目が、感謝の気持ちを伝えるタイミングになりました。

気持ちって目には見えないですよね?だから、目に見える形にして、気持ちを伝えるようになったのが始まりなんです。」

木野山:「な、なるほど。相手が喜んでくれるものだったら一般的にNGとされるものでもいいって、こうした“気持ちを伝えるためのもの”だからなんですね。

改めて『マナー』っていったい何なのか、少し分かったような気がします。」

先生:「そう、NGを探す(学ぼうとする)のではなく、相手の好みを調べて、お歳暮やお中元のギフトを贈ることの方が大切なんですよ。」

お歳暮・お中元に『熨斗(のし)』はつける?

木野山:「お歳暮・お中元に熨斗ってつけるものですか?」

先生:「はい、お歳暮やお中元の贈り物に熨斗をつけるのはOKです。

ただ、お魚やお肉などの生モノを贈る場合は、本来であればつけないのが正解ですね。現代ではあまり気にせず熨斗を付ける方が多いですが。

理由をお教えする前に…。ちなみに、熨斗っていわれて何を思い浮かべますか?」

木野山:「熨斗…箱にかけてある紙ですか?」

先生:「残念、違うんです。かけてある紙は『掛け紙』といって、その掛け紙の右上についているものを『熨斗』といいます。」

※写真は略式の『短冊熨斗(のし)』

先生:「今は紙細工だったり、印刷されたりしていますが、本物の熨斗は『あわび』。昔は、目上の方に何か贈り物を(献上)するときに、高級品であるあわびを添えていたことから始まっています。

もともと生モノであるあわびを付けていたことから、お魚やお肉などの生モノの贈り物には、熨斗は付けなくてよいとされていました。ですが今では、あまり気にせず、熨斗を付ける方が多いですね。」


木野山:「あの紙が『熨斗』じゃなかったんですね!みんな知らないと思います!!

あ、よくお歳暮やお中元の掛け紙に印刷されている紅白のリボンについても聞いていいですか。」


先生:「あれは『水引』といいます。お歳暮やお中元って何度贈ってもいいものだから、リボンのような、ちょうちょ結びの水引を選べばOKです。

喪中の方への贈り物であれば、紅白の水引は付けず、真っ白い掛け紙だけにしておくと、配慮が感じられますね。

本当は喪中の方への贈り物でも、水引を付けること自体はだめではないんです。しかし、紅白という色からおめでたいイメージを受ける方も多いので。『あれ?』と少し疑問に思う方もいるかもしれません。

なので、“相手のことを思って”水引は掛けずお歳暮・お中元とだけ書いておくといいでしょう。」


木野山:「うわぁ…!知らないことだらけでした。」

お歳暮・お中元は配送した方がいい?直接渡すべき?

木野山:「お歳暮やお中元の贈り物って、送った方がいいですか?それとも、直接渡すべきですか?」


先生:「本来は“手渡し”が正しいとされています。ただ、現代は時間的に難しい方が多いですよね?そのため、宅配などでお送りするのも、もちろんOKです。

ちなみに、配送の場合、さきほどお話した熨斗は包装紙の中につけてもらいましょう。熨斗が外側にあると、配送中に折れたり、取れてしまったりするので。

デパートや百貨店でよく『内熨斗にしますか?外熨斗にしますか?』と聞かれると思いますが、手渡しの際は外熨斗、配送の際は内熨斗を選びましょう。」

お歳暮・お中元を配送するときに事前の連絡は必要か?

木野山:「お歳暮やお中元を配送したときって、事前に電話やハガキで相手の方に連絡した方がいいですか?」

先生:「昔はハガキなどで事前に贈り物をすることを伝えていましたが、現代では必要がないと私は思っています。ただ、親やとても親しい友人に対してなら電話で事前にお知らせするのはOKですね。

なぜ『事前の連絡が必要だ』という考えがあるのかというと、生モノを送った場合に受け取れないことがないようにするためです。

今は冷凍・冷蔵の配送もできますし、再配達の手配もすぐに行えるので。これも相手を思いやることが一番大切ですね。

出かける予定があるといっていた相手に在宅かどうかの確認を兼ねて連絡したり、事前の連絡が丁寧でいいと考える人に予めお伝えしておいたりするのはいいと思います。」

お歳暮・お中元を配送するときの大切なポイント

木野山:「お歳暮やお中元を送るときのポイントはありますか?」


先生:「一筆・一言日頃の感謝の気持ちを込めたメッセージを添えるのが理想的なマナーであり、ポイントですね

できれば、ボールペンやマジックは控えて、筆ペンで書くといいと思います。」


木野山:「筆ペンの方がいいんですね!ちなみに、一筆箋や絵葉書、メッセージカードを使うのはOKですか?」

先生:「もちろんOKですよ。もっというならば、品物を買いにいったときに、箱の中に一筆書いたものを入れてもらうと最高ですね。

『ちゃんと準備をして、自分のことを考えて贈ってくれたんだ』というのが、相手にも伝わると思うので。」

木野山:「確かに、デパートの包装紙を開けて、自分への手紙(メッセージ)が入っていたら嬉しいですね!」

先生:「ですよね。気持ちを込めて贈り物を贈るというのは、こういうことだと私は思います。」

お歳暮・お中元を贈る時期・ベストシーズンは?

木野山:「お歳暮やお中元を贈る時期って決まっているんですか?」


先生:「一般的には相手の方が住んでいる地域のお歳暮・お中元のベストシーズンに贈るのがマナーとされています。

けれど、その時期って贈り物が届くのが集中して、面倒をおかけする場合もあるので、あえて時期を外して贈るのもありですね。

ただ、その場合は表書きのお歳暮という言葉を『お年賀』や『寒中見舞い』にしたり、お中元を『暑中伺い』や『残暑見舞い』に変えたりしましょう。」


木野山:「贈り物を贈るチャンスって、意外にいっぱいあるんですね〜。」


先生:「本当にそうなんですよ!感謝を伝えたいときに贈り物を贈る、プレゼントを渡すときにはこれが一番大切です。

若い方だと特に夏や年末、色々と物入りで贈り物ができないときもありますよね。そういったときは無理をせず、時間や懐に余裕ができたときに感謝を伝える贈り物をする、でいいと思います。

もちろん、知識として適切なギフトシーズンを知っておくのは大切ですよ。ただ忘れちゃいけないのが、感謝を伝える気持ちが最も重要だということ。」


また、最近ではさまざまなものがカジュアル化しているため、表書きをお歳暮やお中元ではなく、『日頃の感謝』とか『夏のご挨拶』と記載するのもOKな時代になりつつあるという。

お歳暮・お中元を手渡しする方法【紙袋編】

木野山:「だんだんお歳暮やお中元のマナー、贈り物を渡すときに大切なことが分かってきました!

次に、お歳暮・お中元を手渡しする方法を教えて下さい。」

先生:「NGなのは、袋のまま渡すこと。正しい方法は、紙袋から包装された箱を取り出します。」

※紙袋は、折りたたんで持ち帰りましょう。

先生:「まず、箱は自分向きで正面に持ちます。そして、右手で左上を持ち、時計回しにくるりと回して相手の正面に持ち、軽く会釈をしながら渡します。」

木野山:「ちなみに、お仕事関係の方にお歳暮やお中元を渡すときも同じように渡せば大丈夫ですか?」

先生:「その通りです。会議室などに通していただいた後、袋から同様に出して渡します。

ただ、会社の受付などで渡す場合は、その場で中身を出して渡されると困ってしまう場合もあるので、『袋のままの方がよろしいでしょうか?』という確認をすることが、すごく大事だと思います。」

先生:「贈り物を選ぶときだけではなく、渡すときも相手のことを考えて、必要であればコミュニケーションをとって、お歳暮やお中元を渡しましょう。」

お歳暮・お中元を手渡しする方法【風呂敷編】

先生:「風呂敷を使用した場合も一緒で、風呂敷をすばやく丁寧に取って中身を渡します。

持ち方や渡す際の所作は、紙袋から出して渡す場合と同じでOKです。そして、風呂敷は畳んで持ち帰りましょう。」


木野山:「あ、渡すときって、玄関やお部屋どこで渡すのが正解ですか?」


先生:「お部屋にあがってからがいいですね。ただ、一般的には『鉢植え』や『冷凍品(アイスなど)』は玄関先で渡してもOKだといわれています

また、お部屋にあがらずご挨拶だけの場合もありますよね。そういった場合はもちろん、玄関先で手渡してしまって大丈夫です。」

お歳暮・お中元を貰ったときのマナー

木野山:「お歳暮やお中元って貰ったら必ずお返ししなければいけないものなんですか?」


先生:「いいえ、お歳暮やお中元は、必ず品物を返さなければいけないというものではありません

ですが、お返しをしない場合は、お礼状を送りましょう。贈り物が郵送で送られてきたら、郵送でお礼状を返します。同じスタイルで返すのがマナーです。

お手紙でお礼を伝えるのが一番よくて、次にハガキがいいですね。」

ギフト・贈り物のマナーで大切なのは、お互いがハッピーになること!

木野山:「先生から教えていただいた贈り物やギフトに対する思い、マナーの考え方って、とっても素敵ですね。

何よりも大切なのが気持ちなのだと、改めて気づけました!

最後に聞いてみたい質問をひとつ…!贈り物やギフトって最近だとカジュアル化が進んでいて、マナーも簡略化されていっていますが、これについて先生はどう思いますか?」


先生:「私は、日本のみなさんのマナーに対する考えが、少し間違っているように思います。

マナーというと決まりごとのようになっている。マナーって英語ですよね?日本語にすると『礼儀』という言葉になります。」

先生:「礼儀の“礼(れい)”は『思いやり』という意味があり、“儀(ぎ)”には『型』という意味があります。日本人ってこの型を重視してしまいますよね?

思いやりよりも型を重視してしまうと、『儀礼』になってしまう。儀礼はプロトコル(決められたルール)なので、礼儀(マナー)とは異なります。

そこを間違えてしまっている方が多いと思うんです。決められたルールではなく、相手によって違っていいのが礼儀・マナーなんですよ。」


木野山:「マナーって柔軟に変えていいものなんですね。NG例を知って、間違えないように…とか、正解を探そうとしてしまっていました。」

先生:「そう!それはダメなんです。『お歳暮の時期を外したから今年は贈れない』と思って贈らないと、『今年はあの人からお歳暮が来ない』となってしまう…。

型にはめようとすると、ギフト・贈り物を貰う側も贈る側もハッピーになれないでしょう?

マナーとは本来、お互いがハッピーになるものなんです。」


木野山:「お互いがハッピー…マナーってすごい素敵なものなんですね!」


先生:「そうなんです!『この時期にこれをする』というしきたりや慣習を、日本ではマナーと呼んでしまっている、だからみんなが正解を探そうとするんです。」

先生:「しきたりや慣習は日本の昔の方々が何かしらの理由があって作ったもの。だから知識として知っておいて、尊重することは大事です。しかし、それに縛られてはいけません。

逆もまた然りで、『ルールや決まりは関係ない!』とするのではなく、こういった決まりごとを日本人として重んじる気持ちを大切にしましょう!」


木野山:「なるほど…。相手のことを思っていたらそれだけでいいわけではなく、マナーやしきたりを、贈り物を渡す相手にあわせることが本当に大切なことなんですね。

自己満足になってはいけないし、ルール(型)を守りすぎてもいけない…。ギフト・贈り物ってとても奥が深いですね!

こうしたマナーって、どんなときに勉強するのがいいでしょうか?」

先生:「就職するタイミングや、結婚して親戚が増えるタイミングなど、人生の節目にはこうしたマナーを知識として覚えておくことが大切だと思います。

『エレガンス』という言葉は上品なイメージがあって、そういう女性って憧れますよね?でも実は、エレガンスって『選ぶ・選択する』という意味を持つ言葉。

だからエレガンスな女性っていうのは、色々な知識を知った上で、場面場面で最適な選択ができる人を指します。

マナーをおさえている女性はエレガンスにもなれるんですよ。」

木野山:「わぁ素敵ですね!マナーができる女性はエレガンス…!私もそんな女性になりたいです。

西出先生、今回は素敵なお話をたくさん、ありがとうございました。」

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