谷中敦さんに、とっておきの手みやげを聞きました
谷中敦
1966年生まれ、東京都出身。東京スカパラダイスオーケストラのバリトンサックス、ボーカル担当。曲によっては、ストレートアルトサックス、フルートも演奏することがある。ボーカル曲の主な作詞も手がけており、スカパラがヴォーカリストとコラボする楽曲「歌モノシングル3部作」の歌詞は、2001年以降全て谷中さんが手がけている。また、俳優活動も行うなど多方面でマルチに活動するアーティスト。
どこかサプライズのある贈り物が好きです
――谷中さんといえば、交友関係も幅広く、ギフトを贈る・贈られる機会も多い印象があります。どのようなものを選ばれていますか?
そうですね。贈り物と呼べるかわかりませんが、「現場に差し入れ」をしてもらうことは多いですね。ライブでお菓子を差し入れていただいたり、ツアーであればファンの皆様から現地の美味しいものを差し入れてもらったり。スカパラとコラボレーションをしたゲストの方からお菓子をいただいたこともありますし、現場スタッフへ差し入れをしたこともあります。
最近だと、『遊戯みたいにいかない』というドラマの主題歌『遊戯みたいにGO』のミュージックビデオを撮影した際、コーヒーの移動販売のキッチンカーを呼んで、出演者さんとスタッフさんにコーヒーを振舞いました。スタジオの外にキッチンカーを停めてもらって、「スカパラさんからの差し入れです」と書かれた看板を立てました。みなさん驚きながらも喜んでくれて、楽しかったですね。そういう、どこかサプライズのある贈り物は好きです。
――差し入れが移動販売のコーヒーショップ、アイデアが素敵です。贈り物がお好きなんですね。
実は、個人的に贈り物をするのは残念ながらあまり得意ではないんですよ。手みやげは、もらった人の好みがあるので一概に何が良いって言えないところが難しいですね。大事なのは相手が好きそうなものをぴったり当てられるかどうかだとは思います。でも、お決まりすぎるものを渡すのも考えもの。もらった本人が既によく知っているものをあげてしまうのではつまらないですよね。
本人の好みのものプラスαで、ちょっとだけズラした角度から攻めないといけない。でも調子に乗ってずらしすぎると完全に興味のないものになってしまいます。その良い塩梅がなかなか難しいですね。現場代表として持っていく差し入れも、こんなことをつらつらと考えています。
――いろいろなことを考えて贈り物を選ばれているんですね。手やげを選ぶ際に参考にされているものはありますか?
いざ選ぶときは、いろいろな人からの差し入れのなかで気に入ったものや、美味しかったものを選んでいるかもしれません。自分の中でヒットしたものは誰かにあげたくなりますね。今回紹介する手みやげも、これまでに頂いたものの中から気に入ったものをお持ちしました。
目にも美味しい宝石箱のような「アトリエうかい」の『フールセック』
――この手みやげとの出会いはいつでしたか?とても綺麗な缶なので惚れ惚れしてしまいました。
僕の姪っ子が銀座の「うかい亭」で働き出して、プレゼントしてくれたことがきっかけです。本当に美味しくて驚いたことを覚えています。僕が日野市出身で「八王子うかい亭」が近所にあったこともあり、「うかい亭」のことはかねてより知っていました。
何度か伺ったこともありますし、とても良いお店ですよね。でも、クッキーを出していることは知らなかったんです。「アトリエうかい」のクッキーは、食後にサーブされる『プティフール』が始まりなんだそうです。
本当に綺麗な缶ですよね。デザインはかなり凝っていて、可愛らしいけど、どこか大人っぽいつくりが魅力です。蓋をあけると色とりどりのクッキーが綺麗に敷き詰められていて、童話に出てきそうなクラシカルなクッキー缶なんです。絵に描きたくなります。
クッキーもひとつひとつ綺麗に繊細に作られています。食べてみると、サクサクとしているのに、ほろほろとすぐに溶けてなくなってしまう。濃厚なバターの味がふんわりと長く続きます。何種類もフレーバーがあって全て味が違います。ジャムの酸味がきいたものや、セサミの香ばしいものなど、どれを食べても深い味わい。個性あふれる詰め合わせなのに、各々のレベルの高さに驚きます。
元々クッキーよりもチョコレート派で、クッキーにそこまで魅力を感じてはいませんでした。初めて「本当に美味しいクッキーに出会った」とすら思いました。僕は大きいボックスを買って、毎日少しずつ食べるのが好きですが、甘さ控えめなので何個でもポンポン食べられますよ。
――谷中さんも甘いものを食べられるんですね。あまりイメージがなかったので意外でした。谷中さんは、例えば『葉巻』とか紹介してくれそうなダンディなイメージだったので(笑)。
葉巻ですか!? さすがに葉巻をあげることはないですが、もらった人は忘れられない体験になりますよね。面白いと思うので今度試しにやってみようかな(笑)。
お酒を飲んでいた頃は、いわゆるスイーツや甘いものは全く食べなかったんですが、辞めてからたまにですが食べたくなりました。甘いものが好きなメンバーも多いです。僕らのバンドはかなり動くので、糖分がほしくなるんですよね。あえてメンバー内でプレゼントをしあうことはありませんが、「これ、美味しい」なんて談笑しながらつまんでいるイメージです。
もうひとつの手みやげも甘い系ですが、先ほどのクッキーとはまた少し違った良さがあるものを選んでみました。
濃厚でフレッシュなバターを贅沢に味わえる「ÉCHIRÉ PATISSERIE AU BEURRE」の『サブレサンド』
――もうひとつの手みやげは、バターサンドでしょうか? 手のひらサイズの丸みのあるデザインがおしゃれです。
はい、新宿にある「エシレバター」の販売店舗「ÉCHIRÉ PATISSERIE AU BEURRE(エシレ・パティスリー オ ブール)」の限定メニュー『サブレサンド』です。人気商品のようで、物によってはすぐに売り切れてしまうそうです。サブレサンド以外にも、エシレバターを使った焼き菓子も売られています。エシレバターのお菓子はとても美味しく、贈り物としても重宝しています。
「エシレバター」とは、フランスのエシレ村でつくられた発酵バターのことなんです。芳醇な香りと酸味が特徴の高級バター。この『サブレサンド』はそのエシレバターをふんだんに使った贅沢なバターサンドで、初めて食べた時は本当に衝撃でしたね! クリームの半分以上にエシレバターを使っているので、しっとりとしたサブレに沁みこみ、じんわり甘く豊かなバターの味わいが口いっぱいに広がっていきます。ホイップクリームのような口どけのバタークリームがスッととろけて、とてもクリーミー。
味は『ブール』と、『ラムレザン』、『ピスタッシュ』の3種。ひと目でどの味かわかるよう、異なる包装紙に丁寧にくるまれています。外側の包装紙をぺりぺりとめくると、どっしりとバターが入ったサンドが現れます。サイズは小ぶりですが、バターがたっぷりと入っているので、食べ応え充分です。
――すごく美味しそうです。この手みやげはどのようなときに贈りたいですか?
本当に美味しいですよ。賞味期限も2日と短いので、その場で食べてもらうときは良いかもしれません。見た目もコロッとしていて可愛らしいので女性や子供は喜んでくれそうですね。カジュアルなケーキを持っていくような感覚で贈りたいです。
――素敵な2点の手みやげをご紹介いただきありがとうございます。他にも、印象に残っている手みやげはございますか?
ジャングルで採れた百花蜜の「クメールハニー」はオススメです。カンボジアのジャングルの奥地で“ハニーハンター”の手で丁寧にとられた蜂蜜です。希少な百花蜜を加熱せず生のまま瓶詰めにした商品は、とても珍しいんだそうです。
また、加熱せずそのまま丁寧に瓶詰めすると、ビタミンや栄養素がそのまま残るそうで、本来の蜂蜜の味わいが楽しめるそうです。「体に良い」とわかるのか、口に入れるとハッと目が覚めるような感覚があります。本当に美味しいですよ。
蜂蜜で石鹸も作っているそうです。自然なものだけを混ぜた、これも肌に優しいオーガニックな石鹸。油分が落ちすぎず、洗いあがりもしっとりとしてつっぱらないようです。
『クメールハニー』は「丸山珈琲」がその魅力に着眼して販売を後押ししていたようで、展示会に伺った時に紹介していただきました。コーヒーのなかに『クメールハニー』のハチミツを混ぜた、『クメールハニー入りのコーヒー』をいただいたことがありました。
ウイスキーのような芳醇で複雑な味わいで、コーヒーとハチミツだけでこんな味がでるのかと衝撃を受けました。『クメールハニー』を採取する“ハニーハンター”さんには、ぜひもっとお話を聞いてみたいですね。MEMOCOさんでもぜひ取り上げていただけたら嬉しいです(笑)。
みんなが笑っているハッピーな空間をつくりたい
――谷中さんは人柄からも愛情が滲み出ていらっしゃいます。プレゼントをする際に心がけていることや、心構え、普段考えられていることはありますか?
そうですね。盛り上がっていない人がいると気になってしまう性分ではあるかもしれません。人を喜ばせたい、楽しませたい思いは常にあります。こういう仕事をしているだけあって、時間や労力は必要になりますが、手間暇をかけてでも喜ばせるということにこだわりたい。
例えば二人だけで話しているとき、周りの人が二人の話を聞いてつられて笑ってくれる。そういうハッピーな空間をつくることができると、ある種の達成感と一体感が生まれて嬉しい。
「誰かを喜ばせたい」と思う気持ちは、贈り物と共通していますね。その場にいる人全員が笑ってくれるような贈り物はそれこそ難しいけど、それを一番心がけているのかもしれません。自分があげた贈り物で喜んでくれる人がいて、その先にハッピーな空間が生まれていることが理想です。
企画:大崎安芸路(ロースター)
取材・文:天野成実(ロースター)
撮影:藤井由依(ロースター)