金封の水引はデザインではないのです!
金封(きんぷう、きんぷ)とは「お金を入れて相手に渡すための袋」の総称です。慶事(お祝い)であれ弔事(ご不幸)であれ、お金を入れて渡す袋全般を指します。
金封についている「水引(みずひき)」は、印刷のものもあれば、紐状のもので結んであるものもありますよね。何のためにあるかご存知ですか?
実は水引は「しめ縄」が変化したものだったのです!
■水引の歴史は室町時代までさかのぼる
水引は、室町時代に考案されたものと言われています。
飛鳥時代から、貿易のやり取りがあった中国から届く品(舶来品)には、赤と白の紐が付けられていました。この紐は「中国からのお届け物ですよ、という『単なるしるし』」でした。
しかし貿易品というのは「貴重なもの」であったことから、日本の上流階級の間で贈り物をする際、「高価なものですよ」という意味合いで紅白の紐を付けて送りあったのが始まりなのだそうです。
■なぜ水引をつけるのか?
水引は紙をより合わせて紙縒り(こより)にしたものに糊を付けて固めて紐状にします。
この「紙を縒る(よる)」作業がしめ縄を縒る作業と似ていることから、水引は「細いしめ縄」という意味を持ち、水引は神様が人間界に降りる際の依り代として使われていました。神様に供えるものは高価なものや穢れのないものであったので、供え物には必ず水引が結び付けられてあったのです。
同じころ、一般大衆の間では神様との縁があるようおみくじを境内に結んで帰る「結び信仰」が生まれます。この「結び信仰」と「水引を結ぶ習慣」が混ざりあい、高価なものでなくても、「気持ちを込めて」水引を結ぶようになっていったのです。
本来、水引というのは、「この中身は清浄なものです」と示すためのものなのですね。
水引の色は「格」に影響する
慶事には白赤、弔事には白黒(関西地方では白黄の場合もあります)というのはよくご存じだと思います。では、それ以外の水引の色はどんな時に使うのでしょう?
最近ではカラフルな水引も多いのですが、実は水引の色には格があり、慶事のときに格が高い色は弔事では格が低く、弔事のときに格が高い色は慶事では格が低くなるという決まりごとがあるのです。
慶事の格 弔事の格
高 ← → 高
金 銀 紫 赤 藍 緑 黄 黒
結び方のきまりごととルール
祝儀袋を例にとって説明しましょう。
あまり意識して見たことはないかもしれませんが、白と赤、どちらの色がどちら側に来ているのが正しいのか、覚えていますか?
祝儀袋の水引の結び方は、どんなときにどんな結び方が適しているのか、自信をもって言えますか?
案外「どうだっけ?」と悩んでしまうのではないでしょうか。小さなルールですが、知っておくと「ステキな日本人に見える」ものです。ぜひ覚えてください!
■水引の左右の色はどうやって決まるの?
水引の色の配置は、中国の五行説(陰陽説)をもとにしています。
向かって左側が「陽」(淡い色の水引)、右側が「陰」(濃い色の水引)とするのが正解です。日本でも「左」のほうが位が高いとされていますし、舞台に立った場合も、客席に向かって左側が「上手」となっていますよね。
先ほどの「水引の色の格」を見ながら、手持ちの金封を確認してみても面白いかもしれません。
■祝儀にオススメの結びと用途
お祝いごとですから、華やかなものが良い、という気持ちはとてもよくわかります。しかし、「華やかであれば必ずしも良い、というわけでもない」というのも事実なのです。
用途と、おすすめの結びをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください!
鶴・亀の結びはお正月や婚礼に
お祝いとして思い浮かぶのが「鶴」と「亀」という人は多いと思います。鶴結びと亀結びは「あわじ結び」が変形した結びです。
この2つはとくにおめでたいお祝いに使われます。お正月や婚礼でよく見かけるはずです。『鶴は千年、亀は万年』と言われる通り、どちらも長寿を連想する生き物です。自分も長生きできるように、という祈りを込めてお祝い事に使われるようになりました。
また、鶴は夫婦になると一生添い遂げることから、亀はじっくりと歩を進めることから新郎新婦になぞらえ、『一生添い遂げ、じっくりと幸せな家庭を築いてほしい』という願いを込めて「幸せの象徴」として使われるようになったのです。
鶴の水引は新郎に、亀の水引は新婦に渡すのが正式とされています。また鶴は幸せをもって舞い降りてくるとのいわれから、頭は下向きが正式なものなのです。
松竹梅は、松>竹>梅とは限らない?
松竹梅は3つ揃って「おめでたいもの」であり、本来は優劣があるものではありません。しかしおめでたいものとして加えられた年代が古いものから順に、松竹梅と呼ばれているようです。
松は冬でも緑を保ち、仙人の食べるものとされていました。また、樹齢も長いことから「不老長寿」を願って使われ始めたといわれています。
その後、冬でも緑を保ち、地下茎で新芽がたくさん芽吹くことから「子孫繁栄」を願って竹が加えられ、冬の終わりに花が咲き、春を知らせる梅は古木になってもたくさんの花をつけることから「長寿」の象徴とされました。
この「不老」の松、「子孫繁栄」の竹、「長寿」の梅をおめでたい吉兆のしるしとしたのは日本が発祥なのだそうですよ!
■祝儀・不祝儀のときの水引の結び
お祝い事であれご不幸であれ、人生に1度きりのものや2度と繰り返さない(繰り返して欲しくない)事柄には「結び切り」と呼ばれる結びを使います。結婚式や快気祝いなど、人生に何度も経験しなくてよい(経験したくない)事柄に多く見られますね。
結び切りは「真結び(まむすび)」とも「固結び(かたむすび)」とも称される通り、『一度結んだら、端を引っ張ると更に結び目が締まってほどけなくなる結び方』のことを指します。
結婚式やお葬式でよく使われている「あわじ結び(あわび結びとも言う)」は、『結び切りを華やかにした結び』なので、分類上は「結び切り」になります。
花結び(蝶結び)は「何度あっても良いお祝い」ではない!
一般に「花結び(蝶結びとも双輪結びともいう)は何度あっても良いお祝いに使います」と案内されていることが多いので、そう思っている人がほとんどでしょう。しかし正しくは「花結びは『結び切り』ほど格の高くないものに用いる」ものなのです。
花結びは「真結びの略式」と位置付けられているので、例えば粗品のような「ちょっとしたもの」には花結びの水引で良いけれど、正規のお祝いには不向き、ということなのです。
関東では花結びの祝儀袋は「何度あってもよいお祝いに使われる」傾向が高いですが、関西では「どんなときもあわじ結びの袋を使う」という違いもあるのです。
叶結び(かのうむすび)もおめでたい結び?
おめでたい結びのなかに、装飾結びのひとつである「叶結び(かのうむすび)」や「二重叶結び」というものがあります。これは結び目の表が「十」に、裏が「口」になることから「よろずの願い事が叶う」とされています。
儀式用に多く用いられ、身近なところでは「お守りの口の結び」がこの結び方です。
金封にはほとんど用いられない結び方ですが、この結びを応用して花結びなどをするのであれば喜ばれるかもしれませんね。
自分で「結び」を結んでみたい!
水引でなくても、プレゼントなどの贈り物を自分で結ぶのには大切な意味がある、ということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
自分で結びを作ってみたい、という方に、こちらのサイトをご紹介します。水引の結び方のサイトなのですが、固めのリボンなどでも応用ができるので、ぜひ挑戦してみてください!
目の保養に、水引メーカーのサイトもご紹介します。見るだけでため息が出そうな美しさですよ。
これで失礼となる事態は避けられる
軽く水引についてご紹介しました。
改めて見ると、全ての事柄に理由があることがお分かりになると思います。金封一つとっても、「この色と〇〇の結びだから△△に使うもの」と一発でわかるようになるのではないでしょうか。
市販されている金封を見て「これ、間違ってる」と思えるならしめたもの。ぜひ失礼のない金封を使えるようになってくださいね!