押さえておきたい「お祝いに使うのし紙や祝儀袋の正しい書き方」とは
お祝い事に欠かせない「のし紙」や「祝儀袋」の書き方について、あなたはどのくらい知っていますか?自信がある人もいれば、わからない項目がある人もいらっしゃることでしょう。
いざというときに恥ずかしい思いをしないように基本的なマナーやルールを知っておくのは大人として常識であり、「出来て当たり前」のことなのです。ぜひ一度確認してみてくださいね。
お祝いの場合の「のし紙や祝儀袋」の基本的な書き方とは?
お祝いは「慶びを表すもの」ですので、失礼があるとその喜びは半減してしまいます。決まり文句やしてはいけないことなどのルールを知り、嬉しい気持ちが相手によく伝わるようにしたいものですね。
しきたりや習わしにはきちんと理由があります。その理由を知れば、ミスを防げるようになるはずですので、詳しく見てみましょう。
■表書きを書く時の基本的なマナー
表書き(おもてがき)とは、袋を正面にした場合、水引よりも上の部分に書かれるお祝い事の名前の事を指します。短冊タイプの場合は初めから印字されている場合もありますね。
袋の中心に縦書きで「〇〇祝」や「寿(結婚のお祝いの場合)」と書きます。この部分の字が小さいと全体に頼りない印象となりますので、大きく、堂々と書くとよいでしょう。
■表書きのNGな書き方とは
表書きで絶対にあってはならないのが「誤字・脱字」です。確かこんな字だったな、といううろ覚えで書いたら「シマッタ、間違ってた!」ということもありますよね。
年賀状などと同じように「修正液などで消して書き直すことはNG」です。間違えたら書き直すのが礼儀ですので、別な紙に試し書きをするなどして字を確認してから書きましょう。
表書きが4文字になることを「死文体」といい、嫌う人も少なからずいます。4文字になりそうな場合は3文字か5文字になるようにしましょう。
「蝶結びの水引を使うお祝い」のケース別の表書きの書き方とは?
蝶結び(花結びとも呼びます)の水引がついた祝儀袋でお祝いを渡す場合、表書きはお祝いの種類によってそれぞれに固有の文言があります。場合によっては「複数あってどれを使っても良い」場合もありますが、聞きなれないものや変わっているものは避けたほうが無難です。
「何のお祝いなのかわかること」が大切です。よく使われる表書きをみてみましょう。
■「出産祝い」の場合の表書きとは
子供が生まれたお祝いの表書きはいくつかあり、「御祝」「御出産御祝」などが使われます。ほかには(4文字になってしまいますが)「祝御出産」や「御出産祝」なども良いでしょう。
親しい間柄であれば、メッセージを添えて贈ると喜ばれるでしょう。文面は赤ちゃんが無事に誕生したことを祝う内容や、母子ともに健やかであることを気遣う内容にすると気持ちが伝わりやすいですよ。
■「お宮参りのお祝い」で使う表書きとは
お宮参りのお祝いの場合は「御祝」または「お宮参り御祝」とします。お宮参りのお祝いは贈る時期が決まっており、「お宮参りの半月前からお宮参り当日までに相手方に届くように贈る」のがルールです。
また、お宮参りをする人(本人・両親)が神社等に対して謝礼として渡す場合は「初穂料」や「玉串料」となります。いただいたお礼に対する返礼は「内祝」とし、子供の名前で返すのが一般的です。
■「お食い初めのお祝い」の時の表書き
お食い初めのお祝いの表書きはいくつかあり、「箸ぞろえ(お祝いに金品を贈る場合)」、「祝御食初(お祝いに招かれて金品を贈る場合)」、「祝御成長(お宮参り等にお祝いが間に合わなかった場合)」などが使われます。
また、お食い初めを「色直し式(この日を境に白い産着から色付きの着物に着せ替えること)」と呼ぶ地域であれば「祝御色直(色直し式に招かれて金品を贈る場合)」も使うことができますよ。
■「初節句のお祝い」を祝う表書きとは
初めての節句は、性別によって行う時期が変わってくるのですが、男女ともに使えるのは「初節句御祝」や「祝初節句」がよいでしょう。
男の子であれば「初幟御祝」、女の子であれば「初雛御祝」もおすすめです。また、時期がずれてお祝いを贈る場合は「御祝」とします。返礼は「内祝」として子供の名前で贈るのが一般的です。
■「七五三のお祝い」の場合の表書き
七五三のお祝いは、親としても嬉しいものですよね。七五三のお祝いは、女の子は3歳と7歳、男の子は3歳と5歳なのですが、最近は兄弟と一緒に行うなど、性別に囚われなくなってきています。
七五三の表書きは「七五三御祝」が一般的でしょう。年齢別に贈るのであれば、3歳(男女問わず)は「賀御髪置」(3歳は「髪置きの儀(初めて髪を結う)」といわれたことから)、5歳男児であれば「袴着祝」(男の子は5歳で袴を身に付けたことから)、7歳女児であれば「賀御帯解」(女の子は7歳で大人と同じ帯を締めることから)などともします。
■「入学・卒業のお祝い」で使う表書き
子供の成長とともにお祝いは増えてきますよね。保育園・幼稚園の入園から大学・大学院の卒業まで、年に数回のお祝いが続くこともあるかもしれません。
入園の場合は「祝御入園」や「御入園御祝」、入学の場合は「祝御入学」や「御入学御祝」、卒業であれば「祝御卒業(祝御卒園)」や「御卒業御祝(御卒園御祝)」が良いでしょう。
■「合格祝い」の時の表書きとは
合格を祝う場合はシンプルに「合格祝」や「祝合格」が良いでしょう。どんな場合でもオールマイティーに使える「御祝」として贈るのも良いですね。
合格祝いは貰う側も相当に嬉しいはずですので、直接本人に手渡すのであれば「合格おめでとう」なんていう表書きもオススメです。
■「就職祝い」で使いたい表書きとは
学生から社会人になる際のお祝いとして贈る就職祝いは「御就職御祝」や「祝御就職」、「賀社会人」などが良いでしょう。また、スーツなどを新調するのであれば「御服地料」などもスマートです。
これから独り立ちしていく子供に対しての餞(はなむけ)として「贐」(はなむけ、と読みます)なんていうのも素敵ですね。
■「成人祝い」の時に使いたい表書きとは
成人祝いをもらったら、名実ともに大人の仲間入りです。今後はお年玉がもらえなくなることを覚悟しなくてはなりませんね(笑)。翌年からあなたは、「お年玉をあげる側」ですよ!
成人祝いの表書きは「祝成人」や「御成人御祝」などがあげられます。ほかには「賀成人式」や「御祝御成人」なども使われます。手渡す場合は「成人おめでとう」もアリです。
■「長寿祝い」を祝う表書きとは
おじいちゃんおばあちゃんに贈る「長寿祝い」は年齢によって決まった呼び名がありますので、基本的にはその呼び名を使ってお祝いします。
しかし「敬老の日」など、特別な年齢の区切りではなくお祝いを渡す場合は「寿」や「敬寿(長生きしていることに敬意を表す)」、「祝延寿」などが喜ばれるでしょう。
年齢ごとの呼び名とその意味
呼び名 | 意味 |
---|---|
60歳→還暦・下寿(かんれき・かじゅ) | 60年で干支(10干と12支)の組み合わせ(「ひのえ・うま」や「かのえ・いぬ」など)が1周りすることから |
70歳→古稀(こき) | 杜甫の詩「人生七十古来稀なり」に因んで |
77歳→喜寿(きじゅ) | 「喜」の旧字「㐂」が七・十・七に見えることから |
80歳→傘寿・八十寿・中寿(さんじゅ・やそじゅ・ちゅうじゅ) | 「傘」の略字「仐」が八・十に見えることから |
81歳→半寿(はんじゅ) | 「半」の字が八・十・一に分解できることから |
88歳→米寿(べいじゅ) | 「米」の字が八・十・八に分解できることから |
90歳→卒寿(そつじゅ) | 「卒」の略字「卆」が九・十に分解できることから |
99歳→白寿(はくじゅ) | 漢数字の「百」(100)から「一」(1)を引くと「白」になる(99になる)ことから |
100歳→百寿・上寿・百賀(ももじゅ・じょうじゅ・ひゃくが) | 「白」に「一」を足すと「百」になることから |
108歳→茶寿(ちゃじゅ・さじゅ) | 「茶」の草かんむりが「二十(十が2つ)」、下が「米(八・十・八」に分解できることから |
111歳→川寿・皇寿(せんじゅ・こうじゅ) | 「川」が111に見えることから 「皇」が「白」と「王」に分解され、白=99、王=12という意味から、足して111になる |
112歳→珍寿(ちんじゅ) | 112歳まで生きるのは非常に珍しいことから |
118歳→天寿(てんじゅ) | 「天」の字が一・一・八に分解されることから |
120歳→大還暦(だいかんれき) | 還暦が2周りすることから |
■「その他一般的なお祝い」の場合の表書き
ここにご紹介したお祝いにも、ご紹介していないお祝いにもオールマイティーに使えるのが『御祝』という表書きです。これはどんなお祝いにも使えますので、表書きがわからないときはこの書き方で贈れば間違いはありません。
ただし、神社等への祈祷のお礼に渡す場合は「初穂料」や「玉串料」とし、「御祝」とするのはNGですので、覚えておきましょう。
「結び切りの水引を使うお祝い」のケース別の表書きの書き方とは?
結び切りとは「結び目がほどけない結び方」の水引が付いたものを指します。「切る」というのは縁起が悪いとされ、お祝いの席では避けるべき言葉のひとつですが、ここで使われる「結び切り」というのは「結び上げる」という意味なので、本来の意味とは少し異なります。
一度結ぶと結び目がほどけず、結び直しが効かないことから「人生に一度だけの事柄」や「何度もあってはいけない事柄」に使われます。
■「結婚祝い」の場合に使う表書きとは
結婚のお祝いとしてふさわしいのは「壽(寿)」でしょう。ほかにも「御結婚御祝」や「祝御結婚」なども良いですね。慶び事を表す「御慶」なんていう表現も美しい日本語ですよ。
結婚祝いに関しても「御祝」という表書きが使えますが、印象としてはやや無粋になってしまうかもしれません。一生に一度のことなのですから、ほかの表書きを使うことをおすすめします。
■「快気祝い」で使いたい表書き
「快気祝い」はお祝いの部類には入らないのですが、「病気を繰り返さない」であるとか「何度も病気をしないように」という意味を込めて結び切りを使います。
表書きは「快気祝」とします。
似たような用途のものに「お見舞い」があります。こちらも結び切りを使い「御見舞」「祈御全快」などとします。ただし、火事や水害、地震などの「災害見舞い」の場合は熨斗や水引の付かない白封筒を使ってくださいね。
水引より下の「名前」の書き方とは?
名前の書き方にもさまざまな種類があります。
個人で贈る場合だけでなく、夫婦や複数人での連名、ビジネスでの使用など、用途ごとに気を付けなければならない点などもあります。ケース別に、スマートな書き方や注意すべき所を詳しく見ていきましょう。
■「1名」の場合の基本的な名前の書き方とは
1名、すなわち個人で贈る場合は「自分の名前だけ」なので、比較的簡単に書けるのではないでしょうか。水引の下部分の中央に、縦書きで「姓」と「名」を書きます(場合によっては姓だけ、ということもあります)。
水引と姓名の1文字目までの間を1文字分程度あけ、姓名の最後の文字と袋の端までの間は1.5~2文字程度の余白があるとバランスが取りやすくなります。
■「2名」の場合の名前の書き方
2名での連名は2種類の書き方があります。夫婦の場合と、それ以外の場合で書き方が若干違いますので、それぞれみていきましょう。
夫婦の連名は、水引の下の部分の中央に姓を書き、その下に名前を連名します。名の書き方は2通りで、1つは中央より右側に夫の名を、左側に妻の名を書く方法、もう1つは姓の下に夫の名を、その左側に妻の名を書く方法があります。
夫婦でも別姓の場合や夫婦以外での連名の場合は、贈り主の関係によって姓名を書く位置が変わってきます。夫婦や同僚など「対等な立場の場合」は、中央を中心にやや右側に1人目の名前を書き、やや左側に2人目の名前を書きます。できれば50音順に並ぶと読みやすいですね。
上司と部下など「上下関係がある」場合は、目上や年長者の姓名を中央に書き、そこから左に姓名を書いていきます。一番左側がいちばん目下の人の名前になります。
■「3名」の場合の名前の書き方とは
3名での連名の場合は2通りの書き方があります。上下関係がある場合とない場合でみていきましょう。
上下関係のある場合は中央に格上の人(年長者や上司)の名前を書き、そこから左に序列していきます。一番左側が一番目下の人の名前になるようにしましょう。
上下関係のない友人などの場合は3名の名前を左・中央・右にバランスよく書きます。名前の並び順はとくに問いませんが、できれば右から50音順に並んでいると読みやすいでしょう。
■「4名以上」の場合の名前の書き方
4名以上の連名はプライベートではあまり遭遇しないかもしれません。会社でお仕事をされている人であれば、ビジネスで4名以上の連名をすることがあるので、ご存知かもしれませんね。
差出人の連名は3名までとされていますので、4名以上の場合は代表者の名前以外は「外一同」とし、袋の中に住所や名前を記入した紙を入れます。「外」の字を「他」としないように注意しましょう。
「外」と「他」はどう違うのか
「外」も「他」も「ほか」と読みますよね。ですが『常用漢字表の改定告示』には、「常用漢字では「ほか」という読みは認められたが法令や公文書では「他」を「ほか」と読む読み方は用いない」と定義されています。
「他」というのは「自分以外の、別の」という意味が含まれ、この字を使う言葉は「別の」という言葉に置き換えることも可能です。(例:他の人=自分とは別の人、自分ではない人)
それに対して「外」というのは「自分を含む、一定の範囲から外れた」という意味が含まれ、「外3名」という場合は「〇〇さんのほかに3名」(自分、という範囲を外れた人が3人、すなわち自分を入れて4名)という意味になるのです。
■「ビジネス」の場合の基本的な名前の書き方のマナーとは
ビジネスでは、企業名や部署名を入れた祝儀袋を取引先などに持参することもあるでしょう。その際に気を付けることは3つです。
1.姓名は中央に大きく書く
2.企業名は姓名の右側に、姓名より小さめに
3.2行に納める(企業名+氏名。肩書もつける場合は名前の上に書き、部分的に2行にすることはOK)
■「ビジネスで4名以上」の場合の名前の書き方とは
4名以上の連名の場合、プライベートと違う点が1つあります。基本的な連名の書き方はプライベートと同じですが、ビジネスの場合は「〇〇一同」とし、「外一同」とはしないのが一般的です。
「外」としない理由は、代表者名を書かないからです。営業部一同、や経理二課一同など、部署名だけを記載するため「一同」で「全員」という意味になります。
「ご祝儀袋の中袋」の書き方とは?
御祝儀袋には「中袋」や「中包み」と呼ばれる「お金を包むための袋や紙」が入っています。
金額などの文字は大きく堂々と書きます。「大きく堂々と」というのが大切で、例え下手でも自信をもって書いた字というのは力に溢れていて、相手に気持ちや元気を与えるものだからです。
■中袋表側の「金額」の書き方とは
中袋表側の金額は「旧字体の漢数字で書く」のが基本です。現在一般に使われている漢数字は実は略字で、正式なものではないとされています。
また、後から書き足すなどの改ざんが可能でもある(たとえば「一」は1本足すと「二」や「十」になる、など)ため、旧字体で書くのが好ましいのです。
袋の中心かつ中央に「金〇萬圓(万円)」や「金〇仟圓(千円)」などと書きます。「也」という字は10万円以上包んだ場合にのみ使用しますよ。
■中袋裏側の「住所と名前」の書き方
中袋の裏側に、予め住所・電話番号・氏名などの記入欄が印刷されているものも出回っていますが、正式な中袋には印刷はされていません。もし印刷がある場合はその場所に記入しても問題ないでしょう。
封筒裏の左下、ちょうど封筒の重ね目のラインの左側に住所、行を変えて氏名、更に行を変えて電話番号を記入します。結婚式など、氏名だけでも構わないケースもあります。
中袋に住所氏名の記入と封緘と糊付けは必要?
例えば結婚式などたくさんの人からお祝いをいただく場合、上包みと中袋が別々になってしまうことがあります。その際「どの中袋が誰からいただいたお祝いなのかわからなくなる」ため、できれば住所氏名は裏書きしておくことをおすすめします。
中袋、のし袋ともに、本来は糊付けされていなくても失礼には当たりません(上包みは糊付けしないのがマナーです)。しかし包んだ金額が大きい場合などは、念のため中袋を糊付けするほうが良いでしょう。
封緘(ふうかん)も、なくても失礼には当たりませんが、糊付けをした場合は封緘を施すようにしたほうがスマートです。
マナーをわきまえて、スマートな大人の対応を
お祝い事に関するさまざまな書き方をご紹介しました。記入方法はこのほかにもありますので、これが全てではありません。また、マナーサイトや地域によっては独自のルールがある場合もあります。地域の慣習がある場合は地域のマナーに合わせるほうが良いでしょう。
ぜひ、「マナーと常識のあるスマートな日本人」になってくださいね!