古希(こき)は人生の大切な節目の長寿祝い
誕生日は誰にでも年に一度めぐってきます。この世に生を受けたことへの感謝、一年間無事で元気に過ごせたことへの感謝、家族や友人への感謝等々、自分の誕生日に臨む気持ちはひとそれぞれです。
数え年で70才(満69才)を古希といいます。
この人生の特別な節目を迎えた方への長寿祝いについて考えてみましょう。どのようにお祝いしたらその方に喜んでいただけるのでしょうか。
古希はいまや人生最初の大々的な長寿祝い
祖父母や両親が健康で古希のお祝いができるということは、家族として非常に嬉しいですね。日頃はなかなか面と向かって感謝やお祝いの言葉を口にすることがないかもしれません。でも今回は是非、「いつもありがとう」と思っていること、その方が古希を迎えて自分も嬉しいと思っていることをご本人に直接伝えてみましょう。その方法は、サプライズのイベント、贈り物、メッセージカードなどいろいろ考えられます。
■数え年で70歳を迎える長寿祝い
数え年は、日本では第二次世界大戦頃まで使われていた年齢の数え方です。
生まれたときの年齢を1才として、その後は元日を迎えるたびに1才加えていきます。「還暦」は干支が一周して生まれた年の干支に戻ってくることから数え年の61才をいい、「古希」では数え年の70才「喜寿」も数え年の77才をいいます。
数え年の代わりに満年齢を用いる場合がほとんどの現在では、これらの長寿祝いを満年齢ですることが多くなっています。
■現代では古希からが本格的な長寿祝い
「人生五十年 下天のうちを比ぶれば...」これは、織田信長が好んで舞ったといわれる幸若舞「敦盛」の一節です。これが流行りだした室町時代には、人間の寿命は五十年程度だったのです。
平均寿命が延びた今、還暦を迎えても特に長寿とは感じなくなりました。古希が最初の大々的な長寿祝いのタイミングと言えるのかもしれませんね。
■古希のシンボルカラーは紫
還暦には赤いちゃんちゃんこを贈るという習わしが有名です。
古希では紫がお祝いの基調色です。紫は古来から高貴な人々だけが身につけられる色でした。冠位十二階においても最高位の色は紫です。人生五十年と唄われた時代、古希を元気に迎えられることは当たり前ではなく、非常におめでたいとされていたのです。
■古希以外の長寿祝い
古希以外の長寿祝いを数え年で紹介しましょう。還暦(かんれき・61才)、喜寿(きじゅ・77才)、傘寿(さんじゅ・80才)、半寿(はんじゅ・81才)、米寿(べいじゅ・88才)、卒寿(そつじゅ・満90才)、白寿(はくじゅ・99才)、百寿(ひゃくじゅ・100才)があります。
「古希」と「古稀」どちらが正しい?
「古希」と「古稀」、どちらもよく見かける言葉です。正しいのは希か、はたまた稀かそれぞれの由来からみてみましょう。
■「古稀」から次第に「古希」へ表記されるように
「古希」「古稀」は、どちらも正しいというのが結論です。
もともとは「古稀」が用いられていました。のぎへん(禾)は稲が実った形からできています。希は珍しいとかめったにないという意味で、のぎへんと合わせるとめったにないほど豊作という縁起のよい言葉になります。
しかし「稀」は日本の常用漢字ではないために意味の近い「希」を代わりに当てるようになりました。
■古希の由来は「人生七十古来稀」の一節
これは、唐の詩人であった杜甫の詩「曲江」の中の「人生七十古来稀なり」」(70才まで生きることは古来まれである)という詩句に由来する言葉です。
70才まで生きることがまれだった時代には「古稀」の漢字こそが相応しかったといえます。
「稀」が常用漢字ではなかったという理由だけではなく、平均寿命が男女とも80才代に延びた現在では「これからもずっと元気でもっともっと長生きしてほしい」という希望を長寿祝いの気持ちとして込めるという意味で「古希」を用いるということもあるようです。
古希祝いのマナー
古希祝をする場合、ご本人の好みや希望を考慮して何かほかとかぶらない個性的なものを、と考えるものです。しかし、常識から大きく外れることがないように気をつけましょう。なぜならこれは、その方の人生の中でも、特に大事な節目のお祝いだからです。
■お祝い金の相場
現金を古希祝いとして贈る場合、その金額は平均1万円から3万円とされています。
ただ、お祝いを贈る側の年齢やお祝いされる方との関係によって変わってきます。金額に迷ったら、世間一般の相場だけで判断せずに、同じような立場、お祝いを贈る近しい人々と相談したほうがよいでしょう。
■贈り物のタブー
古希祝いをはじめとする長寿祝いとしては、お茶は香典返しによく使われることから「死」を、櫛はクシという音から「苦・死」を連想させるので贈らないほうが無難だといわれています。
仏様に供える花とされる菊や、花がそのまま落ちる椿も不祝儀につながるので贈ることは控えたほうがよいでしょう。
また、目上の人に贈ると失礼にあたるとされる靴下や靴などの履物(踏みつけにする、という意味)、エプロン(もっと働きなさい、という意味)も一般には避けるべきといわれます。しかし、これもお祝いされる人との関係によって変わってきます。ゴルフが好きな方に、ちょうどいいサイズで歩きやすいゴルフシューズを贈ったとしたら、それはタブーだと言われるでしょうか。いいえ、それどころか大喜びされるはずです。
■ 古希祝いの日取りを決めるとき
長寿祝いをするために集まる人々の都合を優先させがちですが、何よりもお祝いされるご本人の都合や体調を考慮しましょう。同居している家族か、差支えなければ直接ご本人から、候補の日時をいくつかあげていただくとよいでしょう。
古希祝いを確実に喜んでいただくには
せっかくの古希祝いですから、ご本人が喜ぶものにしたいですね。そうするためには、どのような工夫や配慮をすればよいでしょうか。
■ご本人の好みを事前にリサーチ
お祝いされる方が近しい関係なら趣味や服装の好みなどが既にわかっているので贈り物を選びやすいですが、そうでない場合には周囲に聞き込み調査をしてみるとよいでしょう。古希祝いをするというニュアンスをさりげなく漂わせて、前もってご本人から聞き出すようにしておくと一番よいですね。
■古希祝いの贈り物には実用品がお勧め
お酒が好きな方なら、その方の名前を入れたオリジナルラベルを貼った日本酒を古希祝として贈ると喜ばれるでしょう。お店によってはボトルや日本酒の種類、組合せもいろいろ選ぶことができます。ラベルに長寿祝いのメッセージを入れることもできるでしょう。
女性向けにはパープルカラーを基調にした70本のバラの花束も洒落ています。
名前を入れた上等なボールペン、万年筆、レザーのブックカバーや手帳は、スタンダードで上品な品物であれば、男女を問わず嬉しいものに違いありません。
また、ゴルフが好きな方には、いつまでもお元気でラウンドできるようにとの願いを込めて、パープルカラーがどこかに入ったセーターやウィンドブレーカーを贈るのもひとつのアイディアです。予算があればゴルフボールをプラスしてみましょう。1箱でもボールひとつひとつにメッセージを入れる無料サービスを受けられる場合があります。お祝いのシンボルマークを入れてもらっても面白いです。
断捨離が話題になる今の時代には、置物や飾り物よりも実際に使うもののほうが喜ばれる率は高いでしょう。
■古希のお祝いは家族揃って
祖父母や両親が古希を迎えるなら、同居していてもしていなくてもできるだけ家族全員で集まってにぎやかにお祝いしましょう。お祝いされる方が鰻や寿司が好きなら、そのお店を予約してでかけるのもよいですし、出前にして長寿祝いを気楽なホームパーティーにする方法もあります。
■感謝とお祝いの気持ちを声に出して伝えましょう
お祝いに家族が集まったら、ちょっとしたサプライズとしてそれぞれ古希をお祝いするメッセージを思い切って声に出してご本人に伝えてみましょう。このような機会はなかなかないものです。
■古希のお祝いは旅行でも
家族で古希をお祝いするイベントを計画するなら、皆で泊りがけの旅行をするのもよいですね。ご本人にはもちろん、参加した人々全員の思い出になります。
ご本人の意向や季節を考慮して行先を検討しましょう。近場に1泊の温泉旅行であっても、皆で移動中からお酒を楽しめるように公共交通機関を利用することを強くお勧めします。
もちろん、ご本人が車での移動を希望したり、電車などでの移動には体調があまり良くないようでしたら話は別です。
古希を迎えた人生の大先輩への敬意から
古希のお祝いをどうしようか思い悩む人は多いでしょう。きっと、人生の大先輩を敬う素直な気持ちが、その方にとって最適な贈り物が何であるか、答えを導き出してくれるはずです。立ち止まって、その方との今日までのつながりをゆっくり振り返ってみましょう。
その方のためにお祝いについてあれこれ思い悩んだ気持ちはきっと伝わって、それをきっかけに距離がぐっと近くなり一層よい関係を築けるようになることでしょう。思い出に残る素敵なお祝いをしてあげたいものですね。