憂鬱な雨の日でもこころ華やぐ。贈り物にはファッションとして楽しめる洋傘を

日本が誇るべき職人の手仕事が生み出す匠のギフト。今回は、昭和5年に創業して以来、昔ながらの製法で洋傘を作り続ける小宮商店を訪れました。使い捨ての傘が台頭したことで下火になってしまった国内の傘産業ですが、今改めてモノにこだわる人がもつお洒落なアイテムとして注目されているそう。そんな洋傘の魅力を紐解いていきましょう。


かつての洋傘はお洒落の最先端!東京発の洋傘の魅力とは

※ 左から、日傘「極光」シリーズ(ミックス)50cm 10本 27,000円 (税込)、日傘「極光」シリーズ(薄藍/檸檬)50cm 10本 27,000円 (税込)

冷たい雨から私たちを守ってくれる傘は、もはや手放すことのできない生活必需品です。梅雨はもちろん、夏にはゲリラ豪雨が増えてきたこともあって、これからの季節はますます出番が増えることでしょう。

そんな傘ですが、最近はコンビニなどで買える安価なビニール傘に頼ってしまう人も多く、ギフトとしても打って付けなんです。ちゃんと作られた傘は雨を避けるだけでなく、ファッションとしても楽しめる魅力を持っており、喜ばれることひとしおです。

今回は東京都伝統工芸品にも指定された、日本の洋傘を代表する「東京洋傘」に注目しました。訪れたのは1930年に創業した小宮商店。一時は安価な海外傘の進出により窮地に陥ったことがあるという同店ですが、今では毎日たくさんの方が足を運ぶ人気店です。さっそく東京洋傘について詳しく伺っていきましょう。

取材先プロフィール

小宮商店
1930年から3代に渡って続く傘専門店。小売りを始めたのは6年ほど前で、それまでは傘の制作と卸を専業でやってきた。近年は東京洋傘の魅力を広めるため、百貨店でポップアップストアを行ったり、傘の生地のバリエーションを増やすなど、様々な取り組みも行っている

人物プロフィール

小宮宏之さん
昭和44年生まれ。小宮商店の3代目。衰退する日本の傘業界に危機を感じ、盛り上げるための様々な取り組みを始める

傘は大人への一歩。人生の節目に末広がりな贈り物

——ギフトとして傘を見た時、ふさわしいシーンはあるのでしょうか?

小宮宏之さん(以下、小宮):傘はその形状が末広がりであることから、縁起のいいプレゼントなんです。なので人生の節目となるようなお祝い事に向いています。就職を機にスーツに似合う傘を贈ったり、結婚のお祝いに夫婦で揃いの傘を贈ったり。うちの傘は手入れをしていけば末長く使えます。骨が折れてしまっても修理ができますので、ぜひ捨てずに直して使っていただけたら嬉しいです。

——人気の傘や、定番の傘はありますか?

小宮:代表的なものだと、16本骨の「かさね」シリーズです。表と裏の色が違う色になるよう、二重に織った甲州織の生地を使っていて、傘の端の細いラインがアクセントです。雨晴兼用と謳っていて、雨の日をメインに、晴れの日は日傘としても使っていただけます。

カラーバリエーションが豊富なので、贈る相手のことをイメージしながら色を選んでいただくと良いかと思います。

※16本骨の「かさね」シリーズ(グレー×ローズピンク) 21,600円(税込)

——こんな傘をプレゼントされたら、雨の日でもお出かけが楽しくなりそうですね。

小宮:そうですね。そういう傘を目指しています。

傘を作り続けて89年。東京の洋傘の未来を担う小宮商店

——小宮商店の歴史を教えてください

小宮:創業は昭和5年、山梨の大月市の出身だった小宮宝将が、東京・浜町で洋傘作りを始めました。当時はまだ、庶民たちの間では竹の骨組みに和紙と張り油を塗った「番傘」が一般的で、洋傘は大卒の初任給でようやく買えるほど高価なものでした。

お洒落の最先端を行く洋傘は、憧れの存在だったんですね。そこで、そんな最先端の洋傘で何か出来ないかと考え、地元の甲州織を布地に使った傘を思いつきます。甲州織は複雑な柄や繊細な文様を表現しやすい織物だったので、派手な傘も作りやすく、お洒落な人から人気があったそうですよ。

昭和40年頃になると、日本の傘の生産量は世界一になり、海外へ輸出までしていたんです。東京には大勢の職人がおり、作っても作っても追いつかないという時代。昭和50年代以降になると、台湾、中国、韓国などで作った低価格な傘が一気に普及し始めます。

それをきっかけに、傘は使い捨てるものへと変わっていってしまうんです。今ではもう、東京に傘職人は十数名しかおりません。

——同時にお洒落なものとしても扱われなくなってしまったんですね。

小宮:そうですね。そもそも傘が今でもこんなにアナログに、一本一本手作りしているなんて、ほとんどの人は知らないじゃないですか。それは伝えてこなかった、ということでもあるんですよね。

これだけ丁寧に、手間を掛けないと作れないものだっていうことが知られてなさ過ぎるので、「いいものはいい」ということがもっと広まってくれるといいなと思います。

小宮商店の傘には職人によって随所にちりばめられた“仕掛け”も施してあります。そんな“仕掛け”もお客様に長くお洒落に使ってもらえる工夫です。

※骨の関節部分をダボと呼び、そこを布で包む「ダボ巻き」という技術。 ダボがむき出しになることで生地と密着したときに起きる生地の汚れや擦れを防いでいます。

※傘を開く際に上に押し上げる部分を「ロクロ」と呼び、それを生地で包んだ「ロクロ巻き」という技術。傘を開くときも手が挟まる恐れがありません。

改めて傘をファッションとして楽しむ時代に

※傘の手元はサイズの合うものがあれば交換することもできる。注文をすれば名彫り入れや、プレート付けも可能。名彫り3,240円(税込)プレート付け2,160円(税込)

——昨年、小宮商店さんが作る東京洋傘が東京都伝統工芸品に選ばれましたが、それも洋傘の魅力を伝えるための取り組みなのですか?

小宮:そうなんです。経済産業省と東京都に掛け合い、4年ほどかかってようやく実現できました。なんとなく分かると思うのですが、洋傘って伝統工芸っぽくないんです。形が昔からずっと変わっていないのに、まだまだ現役ですから。だから最初はまったく理解されませんでした。

でも調べてみると東京は洋傘製造の発祥地で、100年以上の歴史があるんですよ。だから職人を育てていくことも含めて、次の世代にしっかり受け継いでいかないといけないなと思っています。ちなみに、伝統工芸に認定された東京洋傘は、100年前から使用されていた素材で伝統技法に則り丁寧に製作しています。

※東日本橋ショップで傘を購入すると無料でもらえる傘専用の手提げ袋

——小宮商店の傘の魅力はどんなところにありますか?

小宮:やはり伝統技法を使いつつ、ファッションの一部としても使っていただけるような傘であるというところでしょうか。今の時代、機能だけを求めてしまうと産業的にならざるを得ません。そうではなくて、今一度ファッションとして楽しんで貰えるような、豊かな傘作りを心がけていきたいと思っています。

企画:天野成実(ロースター)
取材・文:石井良
写真:栗原大輔(ロースター)

関連するキーワード


職人の技が光る 匠のギフト

関連する投稿


これぞ職人魂。ライオンハートのあるライフスタイルを届けるために

これぞ職人魂。ライオンハートのあるライフスタイルを届けるために

職人さんにオススメのギフトを伺う本連載。今回はちょっと視点を変えて、プロ根性が垣間見える至極のギフトに注目しました。本日お話を聞いたのは、メンズアクセサリー業界を牽引するブランド、「ライオンハート」の藤原勇気さん。時代を超えて永く愛されるブランドに、アクセサリーPRの極意について伺いました。


レザータウン草加が手掛ける一生モノ「HIKER」のレザーインテリア

レザータウン草加が手掛ける一生モノ「HIKER」のレザーインテリア

職人の手仕事が生み出す、日本が誇るべき匠のギフトを紹介していく本連載。今回着目したのは、インドアでもアウトドアでも使えるレザーのインテリアです。レザータウンを標榜するほど実は皮革産業が盛んな埼玉県草加市。この街の職人たちが協業して作り上げるブランド「HIKER」は、長い時間を共に過ごす大切な人へのギフトなどに最適です。


大切なあの人には末広がりの八角箸を。幸せを呼ぶ“ハシ”渡し

大切なあの人には末広がりの八角箸を。幸せを呼ぶ“ハシ”渡し

職人の手仕事が生み出す匠のギフト。今回は、江戸時代から続く老舗漆工芸「漆芸中島」さんの『江戸八角箸』です。八角箸とは名前の通り、八角形の箸のこと。箸のプレゼントは“人と人とのご縁をつなぐ、幸せのハシ(橋)渡し”とも言われる縁起の良い贈り物。大切なあの人に、とっておきの八角箸を贈ってみては?


ユニークなデザイン、匠の技、この道40年の職人が紡ぐ「giraffe」のネクタイ

ユニークなデザイン、匠の技、この道40年の職人が紡ぐ「giraffe」のネクタイ

日本が誇るべき職人が、手作業で一つ一つ時間をかけて作る匠のギフト。今回訪れたのは、東京都渋谷区にあるネクタイ専門店「giraffe(ジラフ)」。環境対策を目的とした“クールビズ”などが定着しつつある日本では、ネクタイを締めたサラリーマンを見る機会も減っている気がします。しかし、そんな時代においても、ユニークなデザインと丁寧な匠の技で、思わずワードローブに加えたくなるような至極の逸品があるのをご存知でしょうか?男性へ贈る定番ギフトであるネクタイ。丹念に作られ、職人技が光るネクタイの魅力に迫りました。


国宝級の逸品。強く美しい江戸切子を贈る

国宝級の逸品。強く美しい江戸切子を贈る

日本が誇るべき職人の手仕事が生み出す匠のギフト。今回は、江戸の伝統工芸として有名な江戸切子です。江戸時代後期、海外から長崎に持ち込まれたカットグラスが江戸へと渡り、「江戸切子」として開花したのがその起源。代表的な矢来・菊・麻などの紋様には、それぞれ意味が込められているため、贈りたい相手にメッセージが込められる粋なギフトとなりそうです。


最新の投稿


バイク好きに贈るプレゼント13選!父の日や誕生日、記念日に喜ばれる男女向けグッズ

バイク好きに贈るプレゼント13選!父の日や誕生日、記念日に喜ばれる男女向けグッズ

バイク好きさんにプレゼントするなら、どんなものが喜ばれるのでしょう。彼氏や彼女、お父さん、お母さん、友だち、同僚など...あなたの身近にいらっしゃる男性、女性のバイク乗りさんは、きっとそれぞれがバイクを通して人生をエンジョイされているはず。例えば一人気ままなバイク旅や、気の合う仲間とのツーリング、まるで愛車を子供のように可愛がる、コレクターなど...その人のスタイルに合うグッズなら喜ばれそうですね。本記事では、そんなバイク好きさん感動の商品をご紹介。ライダーの必需品から便利グッズ、格好よく乗りこなしたい方へのお洒落アイテムまで揃えました。あなたがそれほどバイクに詳しくなくても大丈夫。ギフト選びのコツも併せて解説していきます。


[2024年決定版]カップル大満足のお揃いペアグッズ!記念日に贈りたい19選

[2024年決定版]カップル大満足のお揃いペアグッズ!記念日に贈りたい19選

カップルで楽しみたい最新のペアグッズをご紹介します。周りにバレないお揃いアイテムや、サプライズにもぴったりなおもしろグッズなど、年齢や好みが違うカップルでも欲しいものが見つかるよう幅広いジャンルからセレクトしました。大人カップルや夫婦はもちろん、中学生や高校生カップルでもgetしやすいペアグッズも厳選。二人だけのオリジナルが欲しい!そんなお二人には、名入れギフトもありますよ。お互いをいつも近くに感じられるおしゃれなペアグッズ、ぜひ仲良く探してみてくださいね。


父親向け誕生日プレゼント決定版!ニーズに合わせて選べる19選

父親向け誕生日プレゼント決定版!ニーズに合わせて選べる19選

大好きな父親へ贈るお誕生日プレゼントはお決まりですか?自分が大人になってみると、幼い頃は知らなかったお父さんの苦労や、深い愛情が身に染みますよね。そんなお父さんに心からの感謝の気持ちを込めて、とっておきのプレゼントを贈りましょう。本記事では40代から50代、60代、70代そして80代くらいのお父さんのタイプやライフスタイル別アイテムをご紹介。さまざまなシチュエーションを想定していますので、きっとお父さんに合ったプレゼントが見つかります。今日だけは普段は照れくさくて言えない「ありがとう」と「お誕生日おめでとう」のメッセージをしっかり伝えて素敵な一日をお過ごしくださいね。


6月生まれの人が喜ぶ誕生日プレゼントとは?男女別で提案するおしゃれギフト10選

6月生まれの人が喜ぶ誕生日プレゼントとは?男女別で提案するおしゃれギフト10選

夏の季節を迎え、花々も美しく咲き乱れる6月。梅雨時期に入るため雨の日も多くなる季節ですが、明るく、楽しく過ごしていただけるようなギフトを贈って、お相手を喜ばせてあげませんか?本記事では、6月生まれの方にぴったりの誕生日プレゼントを男女別にご紹介します。6月ならではの素敵なギフトアイデアをぜひご覧ください。


父の日はポロシャツの季節!プレゼントにおすすめのアイテム15選

父の日はポロシャツの季節!プレゼントにおすすめのアイテム15選

今年の父の日ギフト、何を贈るかはもう決まりましたか?毎年やってくる父の日に、何をプレゼントしようか、頭を抱えている人も多いのではないでしょうか?そこで今回は、これからの季節にぴったりなポロシャツを大フィーチャー!贈り物としてもおすすめのアイテムをご紹介いたします。父の日に限らず、お父さんへのプレゼントランキング常連のポロシャツ。長袖や半袖、無地やプリント柄など種類も豊富なので、きっとお父さんにぴったりの1枚が見つかるはず。何着あっても困らないアイテムなので、色違いで何枚かプレゼントしてもいいかもしれませんね。